ローレライに口付を
2
赤羽という男は将来を嘱望されている画家らしい。
画家と高校生の二足の草鞋の生活をより充実したいという希望でこの高校に通うようになったらしい。
俺の通う高校は自由な校風で有名だった。
事実、留年をした自分の編入もかなった訳だからなんとも言い難い。
けれど、自宅に戻ってパソコンを立ち上げて、検索して出てきた数年前の天才少年赤羽右京を見て、どうしようも無い気分になる。
灯りをつけ忘れた部屋でパソコンの中に写る赤羽ははにかんで可愛らしい笑顔を浮かべている。
今の雰囲気とまるで違うのは、成長したからだけではない。
そんな事、別に友人ではない自分にも分かる。
劇的な変化だった。
それが、自分の所為だと思うのは一種傲慢な事だろうか。
言葉にならないけれど、叫びだしたい気分だ。吐き気がする。
自分が、赤羽の穏やかで幸せな未来を奪ったのかもしれないという確信にどうしようもない気分になる。
恨んでもらえた方がいいのかもしれない。罵ってもらった方がいいのかもしれない。
けれど、そのどれでもなく、むせかえる様な「愛しているんだ。」という言葉はそのどちらでも無かった。
だから、こんなに気になっているのだ。
そうに決まっている。
けれど、同時にもしも彼が元に戻れるのならと考えてしまう。
だって、俺の歌を聞いた人間の中で、彼はまだ生きているのだ。
だから、もしかしてまだやり直しができるんじゃないかと思う。
償いができるのではないかと思ってしまう。
◆
翌日学校へ行くと、俺は美術部への入部届を出したということになっていた。
全くそんな覚えは無かったけれど、俺から届けを受け取ったという赤羽が顧問の先生に出したらしい。
多分きっと、赤羽が勝手に出したのだろう。
理由が分からない。
別に図工の授業以外で絵を描いたことなんか無かった。
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