ご指名相手は俺ではありません

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絵文字が控えめだったからと理由をひねり出してみても馬鹿みたいなだけだ。

けれど、キャバクラで私に微笑みかけた女性の印象とはあわないのだ。

ネット弁慶という言葉もあるくらいで、文字の印象と本人の印象が違うなんてことザラにあるはずなのに妙に引っかかってしまっていた。

元々キャバクラの様な場所は苦手で、この前もつかれてしまってボーイに水を出してもらった。
「それともそちらで飲まれますか?」という言葉に甘えてぼんやりと休憩しながら薄暗い店内を眺める。
やっぱりこういうところは得意ではない。

それを思わず口にしてしまって、気を悪くしたかと取り消す。終始ボーイの男は笑顔を浮かべていて席にいる女の子より話し易いのだからどうしようもない。



彼女から【今度同伴で食事でも】というメッセージが来て、少し悩む。

普段なら断るのだ。
別に女の子は同伴出勤をしなくても、仕事の付き合いの際にはきちんと対応してくれる。
そういう仕事なのだから、当たり前だ。
だから、反射のようにどの店の誰から来たメッセージでも断っていた。

けれど、今回はどうしても彼女に確認してみたかったのだ。

仕事に余裕がある日程を2つほど上げるとすぐに返信が来た。
その返事に少しばかり楽しみになっている自分に気がついて少しだけ驚いた。



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