間違い探し
4-3
◆
夏目のアパートに戻ってからも最初は二人とも無言だった。
俺もどう切り出したらいいのか分からなかったし、夏目も何から聞いたらいいのか困っている様に見えた。
自分から、きちんと説明すべきことなのだろう。
けれど、何から話したらいいのかが分からない。
そもそもの発端は、俺が勝手に夏目の事を好きになってしまったからなのだ。
最初から説明はしたくは無かった。
どうせ自分が海音ではないと分かったら、あの写真の人間ではないと分かってしまったら、もはやばれているも同然なのかもしれないけれど、それでも自分からは言い出せなかった。
「……弟、だか兄貴だか知らないが、兄弟をかばいたかったのか?」
夏目は聞く。
なんて答えるのが正解だろうか。海音は写真をちらつかされても、多分それをばら撒かれても自分でなんとでもできるだろう。
それを知っていて、あえて夏目の脅しにのったのだ。これは俺の我侭だった。
なのに、最後まで勝手に辛くなって、勝手にこの関係を終わりにしようとしている。
それを知らない夏目は、こちらを窺う様に聞いてくる。
確かに禄でもない関係だった。けれど、海音をかばうためだと嘘をつける程度の気持ちな訳でもない。
「そもそも、俺があの写真に写ってないってすぐに分かっちゃうんですね。」
写真は暗がりで撮っていた様に見えた。相手は先ほどのサラリーマンなのだろうけれど、それでも海音を見ればすぐに俺じゃないと分かってしまうのだ。
その位俺と海音は違う。
普通は見間違えたりしない。
俺によほどの興味がない限り。
夏目が最初から、それだという事は分かっていた。
「双子だと知っていたら。」
「……最初から俺の事は相手にしないでしょうね。」
思わず嫌味な言葉が出てしまった。
別に夏目を責めるつもりはないし、そんな権利もあるとは思えなかった。
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