ご指名相手は俺ではありません
続々1
人付き合いがあまり好きでない人間が社長なんて職につくものではない。
そんな事最初から分かっていた話だ。
次はいつにしますか?と飲みの予定を聞かれて内心げっそりとする程度にはストレスになっている。
ただ、会社を経営している限り、嫌ですで済まされるはずもなく仕方がなくあっちこっちに飲みに行っている。
恐らくそういったことが態度に出てしまっているのだろう。家のデスクに放置してあるキャバクラの名刺は酷い量たまっているにも関わらず営業メッセージがスマートフォンに届くのはごくわずかだった。
親しげにしているのは営業のためなのは知識としてきちんと分かっている。
だから何も思うところはない。
そのごくわずかの中でほんの数人に微妙としか思えない返事をしていた。
そのキャバクラを取引先が気に入っている。ただそれだけの理由だった。
だから、相手が気持ちよく仕事が出来る以外のことにはまるで興味がなかった。
◆
ひっかかりを覚えた理由は良く分からない。
最初、という言い方はおかしいかもしれない。最初は普通の営業メッセージに見えていたのだ。
それがいつからか分からないが、少し変わったような気がする。
【そんな風に考える私がおかしいのでしょうか?】
数少ない友人にネット越しに聞く。
【営業メールにほだされちゃったってwww】
さすがに草は酷い。別にその女の子が気に入ったという風には、思っていない。
単に自分の中にあるひっかかりの様なものの正体について相談したかっただけなのだ。
けれど、そういうことなのかもしれない。ただ営業手法を変えたというだけの事を、気にしているだけなのかもしれなかった。
確認してみるのは野暮だろうか。
そんな事を考えてしまう位、そのメッセージが気になっていた事だけは確かだった。
[ 61/250 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]
[main]