間違い探し

4-1

初めて夏目に、彼の自宅以外の場所を指定された。
といっても、それは多分嫌がらせ以外のなにものでも無かったのかもしれない。

場所は、ラブホテル近くのコンビニの前。
それは海音が何処かの誰かとの写真を撮られたラブホテルの近くだ。

悪趣味だ。

ワザとじゃなければ大した偶然だと思った。



待ち合わせ場所のコンビニの外で、時間ちょうどに待っていると夏目は少しばかり遅れて現れた。
脅している側と脅されている側。当たり前なのかも知れないけれど謝罪も何も無い。

「いくぞ。」

夏目はそれだけ言うともう、歩き始めてしまう。
挨拶すらない。仕方なく、後を追いかける。

そこはラブホテルが点在している場所だった。
初めて立ち入る場所だ。だから、後を付いて行く事だけに集中してしまっていたのがいけなかった。

前を誰かが横切るのに気がつけなかった。
その二人連れと目が合う。

俺と似た顔が驚いた表情でこちらを見ている。

慌てて夏目を見ると、夏目も驚愕の表情で双子の兄弟を見ていた。

海音が引きつった笑顔で「空音きぐうだね。」と俺に声をかける。

約束の時間通り夏目が来ていれば、こんな風に海音と出くわしてしまうことなんて無かった。
辛かったけれど、海音のフリを続けることができた。

「……双子なのか。」

静かな、抑揚が全く無い声だった。

[ 90/250 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]
[main]