間違い探し

3-2

夏目が果てた後、高ぶっている体をもてあます様になったのが一番嫌だった。
だけど、夏目の家で自慰をするのも嫌だったし、多分トイレなりでしようとしても夏目が嫌がる事くらい分かっていた。

唯一、マシになったのは帰るときに足腰がまともに歩ける程度になった点位だ。

体の芯の部分でくすぶっている欲望は無視をして服を着る。
今が冬でよかった。ぐちゃぐちゃに皺になった服もその中でべたべたのぐちゃぐちゃになっている体も大体の部分はコートで隠せた。

「なあお前、いま俺以外の相手いるのか?」

布団の上に胡坐をかいたままの夏目が言った。

「……さあ?」

なんて答えようか、しばらく悩んだけれど、兄弟が奔放な性事情を送っていることは知っていても、それ以上の具体的な人数は知らなかったので答えようが無かった。

チッとかなり大きな音を立てて夏目が舌打ちをした。
意味が分からなかった。

「別に俺に興味が無いのに、何でそんな事わざわざ聞くんですか?」

本音だった。
セックスは重ねているけれど、最初から夏目は多分俺に大して興味が無い。

だからこそ、勘違いでセックスができた訳だけれど、大前提として夏目は俺のことなんかどうでもいいのだ。
なのに、わざわざ俺のことを聞くという事実があまりにも不思議すぎて思わず聞いてしまった。

多分、疲れていたのだ。じゃなきゃ単なるセックス相手にこんな質問しないってことに気が付いて何も言わなかったはずなのに。

「……さあ?」

今度は夏目がニヤリと笑いながら先ほどの俺の台詞を繰り返した。

まあ、そうだろう。まともな理由なんて返ってくる筈のない質問だった。

「帰ります。」

それだけ言うと俺は夏目のアパートをあとにした。

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