光芒にうたう

1

※番という男同士で伴侶になれそうな感じの書き方してますが、
人外のほうの親子関係がなさそうな設定になったので、男性妊娠はしない世界だと思います。


子供の頃からずっと、このひと夢ばかり見ていた。

それが竜族との番の証だと知るずっと前から、夜眠るとひとりの“ひと”が現われるのだ。
そのひとはあるときは俺と同じような人間の姿だったり、あるときは竜の姿だったりした。

ただ、夢の中のその人はいつも、切ない位に優しくて、泣きたい位に俺のことを愛しげに触れてくるのだ。
何度も、何度も、夢の中でそのひとにあった。

名も聞いた。
ハガネと名乗ったそのひとは美しい銀色の竜だった。


竜族の番は、その伴侶の夢を見続ける。寓話でも語られている世界の常識だった。
竜族の役所に申し出てはみたけれど、そんな竜はいないという事で虚言扱いされてしまった。
実際勘違いや、虚言は多いらしい。上位階級である竜族と番になればその後の生活は約束されたようなものだ。


「ハガネ様はこの世界のひとではないのですか?」

ある晩夢でそう訊ねると「すまない。もう少し待っていてはくれないか?」そう返した。
その頃には毎晩の様に夢で会っているハガネのことを好きになってしまっていた。
もし自分の妄想であったとしても忘れられない位、このひとのことが好きだった。

俺を見る優しげなまなざしも、自分のことを語る声も、背中に乗せてくれて飛んだ空の景色も何もかもが好きだったしそれが現実だと思いたかった。




俺の家に迎えが来たのはそれから2年ほどたっていた。
俺はもう、半ばあきらめていたし、夢が自分の妄想なんだと思っていた。

「ハガネ様……。」
「様はつけなくていい、伴侶殿。」

目が覚めているときに聞く声は、夢よりも低く甘やかに聞こえた。

「今までどちらに?」

一瞬ハガネは言いよどんだ。

それから、不自然に視線をそらしてポツリと言った。

「竜は卵から孵るまでにも夢を見るんだ。夢で逢っていたときはまだ生まれていなかったから。」

だから、逢えなかった。申し訳なかったと言われた。
その姿は物語で読んだ、それから夢で会っていた竜というものとだいぶイメージが違っていた。


「竜は卵から孵ってしまえば成人するまではひと時だから。」

このひとは自分より随分年下なのではないかとか、色々考えそうになってしまったけれど止めた。
だからといって立ち止まれそうには無いのだ。

ハガネを抱きしめると鱗の感触が直ににして、それだけで涙がにじんだ。

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