明けの明星、宵の明星

6


「もう、やらぁっ……。」

ろれつが回らなくなって酷い嬌声ばかりあげる様になってどのくらい経つだろう。

都竹さんはその間ほぼ無言で俺を責め立てる。

体も心も快楽にドロリと溶けて力は入らず、なすがままだ。
部屋中に都竹さんの匂いが充満している。

それだけで下肢がズクリと疼く。

はしたない自分の事を都竹さんが覚えているのか覚えていないのかは知らない。
気にしだしてしまったところでどうにもならない。


「早く、ねえ、もうっ……。」

都竹さんが欲しくて欲しくてたまらなくて思わずねだると、口付けをされる。
口付けというよりも口内をむさぼられるというのに近い行為に上手く息が出来ない。
都竹さんの舌が自分の舌の根元を撫でる。そのまま唾液を飲まされて舌を絡ませる。

頭の中が自分の番の事でいっぱいになる。


碌に息継ぎも出来ないのに、都竹さんはそのまま一気に俺の事を貫いた。

衝撃に思わずのけぞる。
それも許さないという様に肩を押さえつけられて根元までくわえ込まされる。
その行為全てが快楽をよんでいて、多幸感に思わず吐精してしまう。

少しだけ残っている思考はいったばかりでインターバルが必要だと分かっているのに、体も心ももっともっとと都竹さんを求めている。

どちらにせよまともに言葉を紡げないのだ。「あっ……。」とか「やぁッ……。」とか喘ぎ声しか出ないのだ。

都竹さんにはいいともいやとも伝わりっこない。

都竹さんは有無を言わせず抽送を開始して俺は中からグチャグチャになるしか無かった。



ぐったりとベッドに横たわる横で都竹さんは今日はいつもより穏やかな表情で俺の髪の毛を撫でている。

「……ご迷惑をおかけして済みませんでした。」

婚約者で一応番なのだけれど、それでも申し訳ない気持ちで一杯だった。

「連絡をしろと言ったのは俺だ。」

そっけなく言うのに都竹さんの表情は優し気だ。
その表情をみて胸の奥の方が締め付けられるように甘く疼く。

「遺伝上の運命って周りから分かるものなんですか?」
「運命と番になった場合はフェロモンで分かる。」

だけど俺からはしていないということだろう。だから安藤は都竹さんが来て驚いたのだ。

「俺からフェロモンが出ていないのは置いといて、都竹さんからは匂いがしてるってことですよね。俺も分かればいいのに。」

それは多分俺の為の匂いなのに俺には分からない。
悔しくないと言えば嘘になるだろう。

「そんなものを嗅いでしまったらまともな生活は無理だったろうから、諦めろ。」

あと、何か勘違いしている様だが匂いはしている。都竹さんはそう言ってもう一度俺の頭を撫でた。
微量すぎてこうやって近くに居ないと分からない位だけれど番の証のフェロモンが出ているらしい。

自分では分からないけれど、都竹さんがそう言ってくれるならそれでいい。

「貴方にとっての運命が俺ならそれでいいです。」

半ばまどろみながら都竹さんに言うと、先程噛んだ項にそっと口付けを落とされた。



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