明けの明星、宵の明星

5

車に放り込まれたところまでは辛うじて覚えている。

けれど気が付いたら家に帰ってきていて都竹さんに「お手数をおかけしました。」という。
けれど、その後に言おうとした会社に戻ってくださいという言葉は口づけられてしまって紡げなかった。

「体調に問題は?」

淡々と聞かれる。

「多分単なる発情期ですよ。」

熱に浮かされた様になりながら答える。

「そうか。」

それだけ言うと、都竹さんはネクタイを外した。
思わずその姿に見惚れてしまう。

と、都竹さんと目が合う。
その瞬間、一段と都竹さんの匂いが濃くなった気がした。


クラリとする。酒は飲んだことがないが酔っている状況というのは多分こんな感じなのだろう。

再び抱きあげられて寝室へと向かう都竹さんに、最後の理性で訊ねる。

「会社はいいんですか?」
「問題ない。」

そう答えられてしまうと何も言えなかった。



ベッドに寝かされたかと思うと体をうつ伏せにされてストールを取られてしまう。
それから。番の証の上から噛みつかれる。

「あの番はお前の友人か?」

低い声で言われて一瞬誰の事を言われているのか分からなかった。
けれどそれがあのオメガとそれから一緒にいたアルファの事だとわかり、モヤモヤする。


「……都竹さんはもっとオメガらしいオメガの方がよかったですか?」

自分以外の人間の事を考えないで欲しかった。特にオメガの事など忘れて欲しい。
それが本能から来るものなことはもう知っている。

都竹さんは吐息だけで笑った気配がして、もう一度項に噛みつかれた。

「こうやって噛みつかれて喜んでいるお前がオメガらしくない訳が無いだろう。」

そう言うと、そのままズボンを脱がしにかかる。
まるで、獣の様だと思う。

だけど自分も嫌って位興奮していて、その獣の様な行為をただ期待して待っているのだ。

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