明けの明星、宵の明星
3
「アルファはね、お前みたいなのを選ばないんだよ。」
ガツンと頭を殴られた様な気分になった。
数秒おいてようやくそれが安藤との仲について言われているのだと気が付く。
あの人との事を言われたんじゃないのは分かっているのに怒りがこみあげてくる。
それがオメガとしての本能なのか、それとも別の何かなのかすら分からないのだから欠陥品なことに違いは無い。
「こんなもの、お前にはいらないだろ。」
そう言って、抑制剤を取られてしまう。
「返せ!」
自分で思ったよりも大きな声が出た。
「は?何なの?」
怒ったのがいけなかったのだろうか。それとも安藤の言った通りオメガ同士で関わり合ったのがいけなかったのだろうか。
息が苦しい。本格的に発情期が始まってしまった様だった。
「都竹さん……。」
何かあったら必ず連絡をする様にと言っていたあの人の顔を思い出すともう駄目だった。
思わずしゃがみ込む。
「なんだよ急に……。」
タスクが俺を見て息を飲むのが分かった。
「ちょっと待てよ。何でお前からこんな匂いがするんだよ!」
何か怒っている声がするのにもう、良く聞こえない。
「正弘っ。」
オメガの叫び声が聞こえた気がした。
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