明けの明星、宵の明星

2

「それ俺に聞く前に旦那に聞けよ。」

呆れた口調で安藤が言う。

「だって正弘怖いし。」

ふわりと笑った顔は確かに美しいと思うのに、のどの奥辺りが気持ち悪い。
多分これがΩ同士の同族嫌悪ってやつなのだろう。

「タスク?何やってるんだ。」

低い声が響く。見た瞬間恐らくこの人間はαだろうという整った顔立ちの男が立っていた。

「よう。」

安藤が適当に挨拶をする。そこまで適当なタイプだとは思わなかったから少し驚く。

「アルファ同士なんてこんなもんだよ。
今だって番を取られるって思ってる筈だ。」

舌打ちが聞こえる。

「なにベータにベラベラ喋ってるんだ。」
「正弘、止めなよ。」

正弘と呼ばれたアルファは苛立ってる様に見える。

「で、タスクはなんで安藤に話かけてるんだよ。」
「えー。安藤君がベータ連れてて珍しかったから、一緒にご飯でも食べようと思って。」

正弘がこちらをチラリと見る。
自分で言うのもあれだが、まずオメガには見えない。
フェロモンも抑制剤を飲んでいるし、やや珍しいタイプらしくほとんどのアルファは反応しないと医師にも言われている。

だから、大丈夫。

自分に言い聞かせていると正弘は直ぐに俺に興味を無くしたように視線をそらした。

まあ、そうだろう。あの人以外にオメガとして見られるのはなんとなく嫌だったから少しほっとした。

「俺は友達と食べてるんだから、お前らはお前らで食えよ。」

安藤が溜息交じりで言う。

「そう?残念。」
「タスク……。」

もう少し粘られると思ったが、二人は直ぐに別の空いた席を探して座っていた。


「悪い。」

安藤に言われて首を振る。

「友達?」
「まあ、腐れ縁みたいなやつだ。」

美しいアルファと美しいオメガ。理想的な番に見えた。
奔放に見える性格もきっとああいう人なら許されるのだろう。

「体、大丈夫か?」

安藤に不意に聞かれるが何のことだか分からない。

「何の話だ?」

思わず聞くと溜息をつかれた。

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