親愛のイドラ

7

だけど、俺が返事をする前に染井はすぐに俺のズボンと下着に手をかけてしまう。

「この前の時は焦りすぎてたから無理矢理脱がしちゃったよね。」

そんな事は全く覚えていなかった。
抱いて欲しくて自分で脱いだとばかり思っていた。

だから、染井に脱がされるという行為がこんなに羞恥を伴うってことは知らなかった。
馬鹿みたいに期待している所為だろうか、下肢はすでに兆しを見せていて形が変わっている。

覆いかぶさっている染井がそこをチラリと見てそれからニヤリと笑った。

「吉野って感度いい方?」
「知らねーよ。こんな事したことねーし。」

早口に返す。口を開くと上ずった喘ぎ声が出てしまいそうで歯を食いしばる。
クツクツと染井は喉で笑っている。こんな笑い声は初めて聞いた。

「へえ、初めてだったんだ。」

恐らくその割に積極的だったという事が言いたいのだろう。
当たり前だ、途中でやっぱり止めたと言われたく無かった筈だ。

でもなんて説明したらいいかわからない。

「そんな顔しなくていいから。」

太ももに手を伸ばしながら染井は言った。
それだけでこみ上げて泣いてしまいそうになる。

「吉野この内側のところ好きだったよな。」

自分でも好きかどうかなんてよく知らない太ももの内側を撫でられてビクリとはねる。

「んっ…、やぁっ、あッ……。」

どうしようも無くなって縋る様に染井の腕をつかんでしまう。
そんな俺の様子を満足気に見つめる染井の顔は全く知らない。

断片的に覚えているセックス中の顔のどれとも違っていて、その顔はまるで俺の事を好きでたまらないと言っている様で、腰のあたりがむず痒い様な気分になる。

「前、触るの嫌がってたけど、多分……。」

そこで初めて染井が言いよどむ。
別に声に出して言う程の事じゃない。

実際、今もこんなに好きだって伝わってくるのに怖くて怖くて仕方が無いのだ。
やっぱり男の体は駄目だって染井がなってしまうんじゃないかと怖い。

[ 56/250 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]
[main]