世界の終わり方

3

「俺と付き合ってみる?」

幼馴染は驚いた顔をしている。
しまったと既に言葉にしてしまったことを後悔した。

「あはは、冗談――。」

だよと自分の言ってしまった言葉を否定しようとするが最後まで言えなかった。

「そうしようかな。」

力ない声で幼馴染は言う。
もう何かを考えるのは嫌だという風情で言われる。

「まあ、気分転換にはなると思うからとりあえず、今から恋人ってことで。」
俺がそう言うと幼馴染は、少しだけ微笑みを浮かべた。

◆◆◆◆◆◆

あの人が自分のクラスに良く来るようになった。

スキンシップの多かったクラスメイトの幼馴染だと言われて、なるほどと思う。
物静かなタイプのあの人と、どちらかというとうるさいタイプのクラスメイト不思議な組み合わせだと思ったが、あの人のクラスメイトを見る目を見てそのあまりの優し気な顔に、ああと思う。


それと同時に、浮かぶのはズルいという感情だ。
ずるい。あのクラスメイトがズルい。

そこでようやく、あの人に対して自分がどんな気持ちを抱いているのかに気が付く。

ああ、そうか。俺はあの人の事を恋愛感情として好きなのか。

気が付いた瞬間に希望がかなわない事を見せつけられるのはさすがにキツイ。
思わず席を立つと教室を出た。
さすがに絶対に俺には向けないであろう顔を見せるあの人を今見るのは無理だ。

初めて知った恋の味はとてもとても苦いものだった。



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