明けの明星、宵の明星

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「なんだ、男なのか。」

第一性別を落胆したトーンで言われ、ああそういう事かと思った。

Ω(オメガ)と呼ばれる第ニ性別を持つものは結局のところ社会的弱者だ。
世の中は3つ性別で分かれているが、様々な能力が開花しやすいとされるα(アルファ)も一番人数の多いβ(ベータ)に比べ、体が弱く発情期がある上に男でも妊娠をしてしまうオメガは社会的なハンデがありすぎるのだ。

一つだけ有利な点があるとすれば、能力の高いアルファは著しく受精率・妊娠率が低い。原因はまだよくわかっていないらしいが、オメガとであればそれ以外とのケースに比べて圧倒的に子を残せる可能性が高くなるということだ。

それに、アルファの子はアルファであるかオメガであるかのケースが極めて高い。
俺の両親も父親はアルファだ。

まあ、自分の子がどの第二性別になるか分からないという位ランダムなのであればここまで差別的な階級制度に近い状態にはなっていないだろう。

とどのつまり、役立たずのオメガは子供を作ることだけはできるので、アルファのコミュニティ、要は金持ちの間では子供がオメガだとわかるとある程度の年齢で婚約者を見つけてしまうのが一般的だ。

オメガには庇護者ができるし、アルファには子供を産むための人間が手に入る。


でも、いいことだらけとなる筈がない。

目の前の婚約者、都竹 貴紀(つづく たかのり)にとってもそうだったようで落胆した表情でこちらを見る。
まあ、そうだろう。運命の番なんてものにこだわって無い人間も多いがそれでもそれなりに自分の好みに合った人間を選びたいというのが人情だろう。

しかし、この婚約はお互いに断れる性質のものじゃない。

だから、俺の性別を言ったのだろう。

「男で申し訳ないんですが、きちんと発情抑制剤も飲みますし、せめて俺の大学卒業まではこのままってことにしてくれるとありがたいです。」

へらりと笑う。少し物言いが嫌味っぽくなってしまっただろうか。

けれど、都竹さんは少し驚いた表情をしただけで何も言わなかった。

家という意味では都竹さんにもメリットはあるのだ。
本当に結婚をするかは俺が成人してから考えるので充分に思えたしそれまでに別のオメガを囲うというのであれば、それも仕方がない。

そんな事情で俺と都竹さんの共同生活は始まった。

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