夏の間に買った花火が残っているとか言い出して、来年になって湿気てしまったらもったいないからやろうぜぇ、なんてスクアーロが言ってきたのは冬の初めだった。
木枯らし一番が吹いたとテレビでやっていたのにもかかわらずこんな寒い中大の大人二人がガーデンの隅にバケツを置いて花火をやる意味が分からねぇ。
そう思いながらもなんだかんだで丸め込まれて防寒して寒い空気の中、派手に弾ける花火を見ているのは何とも言えなかった。
炎の明かりを見るとほっとする、という事があるようだが電気が主流のこのご時世、そのありがたみを享受することも今まで無かったが、せっかくの花火を楽しめるようにと電灯を点けずにやっていると明るい炎や色鮮やかな炎はなるほどぬくもりを与えてくれているように感じる。
マッチ売りの少女はきっとこんな気持ちでマッチを擦っていたのだろうななどと考えていたらスクアーロが花火を持ちながら身を寄せてきた。
「なんだ」
「いや、思いの外寒かった」
「……で、なんで寄る」
「近くの熱源はお前しかいねぇだろぉ」
「は、隣が誰でも良かったのか尻軽」
「よくねぇよ!お前じゃなかったら…、……」
そこまで言いかけたらやめる意味ねぇだろ、と思いながらも普段恥じらわない男が、花火の色と関係なく頬を赤らめて離れようとしたので肩を抱き寄せる。
「おい!」
「うるせぇな、オレも寒くなったんだよ逃げんなカス」
「………」
拗ねたような顔をしながらも、暴れるのが治まったので肩を抱き寄せていた手を引き、二人で花火を見つめる。
あらかた派手な花火を終えて、最後は線香花火だけが残っていたのでふたりで屈みながら弾ける小さな光源を見つめる。
「こんな寒い冬にやるもんじゃねぇな。寂しすぎる」
「そうかぁ?オレはわりかし良いもんだと思っちまったぞぉ」
肩が当たるほどに近いおかげで小さく笑う振動すら肩越しに感じながらオレは一瞬だけスクアーロに視線を向けて、照れ隠しに、苦し紛れにと言った方が正しいのか舌打ちしてから線香花火に視線を下ろした。スクアーロが来年も花火が残ったら二人でやろうなぁ、なんて言い出したので、残ったらなと返しておいた。
20131112(くうちゃんリクエスト。冬の花火).
ありがとうございましたーっ!!