No Smoking


▼ 31-1/3

『プルルルル……』
『プルルルル……』
『プ』

『はい。こちらサンディ島近海管轄海軍支部』
「M・C-----、海軍本部大佐スモーカーだ。ヒナ大佐へ直接繋いでくれ」
『了解』


《カチャ……


 タン、  タン、  タン、  タン、  タン


                ――コンコン》


〈入りなさい〉
〈失礼します!〉

《ギィ》

〈海軍本部よりスモーカー大佐から入電。ヒナ大佐へ直接お話しがあるとのことです〉
〈オーケー、変わってちょうだい〉


《――ガチャ》

『御機嫌よう、スモーカー君。あなたから緊急以外の連絡だなんて、一体どういう風の吹き回し?』
「異動からひと月だろう。どんな調子かと思ってな」
『あら、殊勝な気遣いだこと』

〈ヒナ大佐、こちらの件は……〉
〈ああ、あなたは少しそこで待ってらっしゃい〉

『それで本題は?』
「……定期召集まで一週間を切った」
『そうね。お陰で忙しくしてるわ、ヒナ迷惑』
「クロコダイルは乗り気だったか?」
『イエスよ。政府との繋がりは国民へのアピールになるもの……知ってる? 彼、この国じゃ英雄扱いされてるのよ。ネフェルタリ王家の威信も落ちたものだわ』
「王女が消えてから3……いや2年か? 反乱が起きるのも時間の問題だろうな」
『それで、七武海がどうしたのよ。どうせあなたは護送するわけでもマリージョアに配備されるわけでもないし、関係ないでしょう』
「……。……ナマエがな」
『ナマエ……? って……あら』

《ガタン!》

〈ヒナ大佐! お電話中すみません、至急この書類にサインだけお願いできませんか!〉
〈ちょっとあなた、なんでこんな重要書類をギリギリになって……!〉
〈申し訳ありません!〉

《カリカリ、カッ》

〈あっ、ありがとうございます!〉
〈まったく……反省していただける? ヒナ激怒よ。もう今はいいわ、さっさと行きなさい〉
〈失礼しました!〉

《バタバタ、バタ、  バタ、……》

『ふう。で、なんだったかしら……』
「定期召集とナマエの話だ」
『ああ、そうだったわね。あの子が心配なのはわかるけれど、それは流石に神経質過ぎるわよ。海軍本部を通るといっても一瞬のこと、出会う確率自体相当低いわ。大体、たかが保護対象をあの海賊連中が気にかけるはずないじゃない』
「いや、おれが言い出したことじゃねェ。妙なのは青キジだ……何かあるたァ思うが」
『大将が警戒しているというわけ? 詳しいことは聞いてないの、スモーカー君』
「"天夜叉"ドフラミンゴと、裏がありそうな海賊に気をつけろと」
『……? ドフラミンゴはさておき、クロコダイルは昔から比較的大人しい海賊じゃない。少なくともあなたよりは政府の言うことを聞く男よ』
「は、どうだか……そんなタマにゃ見えねェが」
『あなたの勘にいちいち付き合ってられないわよ』
「念のためだ。青キジの言い分を抜きにしても、どうやらナマエが七武海と無関係……とは言ってられねェみたいなんでな」
『……? どういうこと』
「バーソロミュー・くまと接触したらしい」
『……なるほどね。少し待って』

〈そこの海兵君。手配書を取ってちょうだい〉
〈お任せください! どのような海賊を?〉
〈七武海よ。古いものが纏めてあるでしょう〉
〈了解〉

《カタン》  《ガサガサ、ガサ……》

〈こちらでよろしいですか?〉
〈ええ、助かるわ〉

《バサ》

『それで? 今のところ、集まる可能性が高いのは誰なのよ』
「ミホークとハンコックはまず無いだろうが……くまは間違いなく来るだろうな。青キジの言い分からしてドフラミンゴも顔を出す可能性が高い。読めねェのは残りのジンベエとモリア、クロコダイルだったが」
『クロコダイルは確定……と。最低でも3人、多いわね』

《カリカリ、ペラ、カリカリ……》

「……」

《ペラ》

『いっそ七武海がいる間は本部に出入りしないよう言っておくのが一番手っ取り早いんじゃないかしら。こちらの人員にも余裕はないし』
「おれも同意見だ。下手に手厚くして目立つのも逆効果だろうからな」
『ええ……けれど一つ忠告よ、スモーカー君。この間と同じ轍を踏みたくなければ、ナマエにはきちんと説明しておくのを勧めるわ』
「……だろうな」
『何よ? 別にあの子、たとえ狙われてるのが事実だったとしても怯えるほどやわな性格じゃないでしょう。やたらに心配しなくても大丈夫だと思うけれど』
「逆だ。ナマエは……自分に利用価値があると分かれば無謀なことを平気で仕出かすだろう」
『……それは否定できないわね』
「まァともかく、この件はおれの方からナマエに伝えておく。お前もこっち着いてから余裕があれば顔見せに……」
『あら、今までそんなの言ったこともないくせに。言われなくてもそうするわ。なんなら本部出禁で退屈してるナマエのお宅に訪問したって構わないわよ』
「……おれの自宅だ」
『そうだったかしら。ヒナ初耳』
「……」


                《コンコン!》
           〈ヒナ嬢! 少々お話が!〉

〈すぐ終わるから待ちなさい!〉

『それじゃ、お聞きの通りわたくしは忙しいからこれで。また定期召集で会いましょう』
「あァ、……」
『切るわよ』

        《――ガチャ!》



「……はァ」

prev / next

[ back to title ]