No Smoking


▼ 23-2/3

 夕暮れが近づき、窓から差し込む陽光は鈍くなってきている。落としてあった照明を点け、ナマエの部屋……もとい寝室へ足を踏み入れると、舌の上を漂う葉巻の残り香を押し退けて、甘いような、懐かしいような、芳しい匂いが鼻についた。香水の類ではないのは確かだが、一体正体はなんなのか――彼女の部屋は不思議と気分を落ち着かせる、日向のような香りがする。
 この部屋に入ることを許されるのはこれきりだろうと思いつつ、ナマエの色に染められた寝室を軽く見回した。片付いた、そのくせ生活感のある部屋だ。あちらこちらにあるインテリアは彼女の趣味だろう。ベッド脇のサイドボード上に並ぶのは、いくつかのぬいぐるみと目覚まし時計、数冊の本、そして液体の入った霧吹き……なんとも、人柄が出ているというか。

 そんなところを眺めつつ、彼女の背丈にはあまりにも大きすぎるベッドの近くまで歩み寄る。ナマエはもぞもぞと掛け布団を押し下げて、逆上せたような目でおれを見上げた。呼吸は乱れていて、相変わらず頬も紅潮している。おそらくまだ熱が下がっていないのだろう。

「スモーカ、さん」
「……どうした」

 スモーカーさんがベッドの端に軽く腰を下ろし、ぎい、とスプリングが軋んだ音を立てた。そんな何気ない仕草で、この人がここからすぐに立ち去る気はないのだということが伝わってきてほっとする。どうしたと聞かれて、何か言おうとして掠れてしまった声に、ようやく喉の渇きを思い出した。

「あ、の……」
「あァ」
「のど、が……かわきました」
「分かった、水でいいか」

こくりと頷いたナマエを確認してから、ベッドに腰掛けたまま腕を伸ばし、サイドテーブルに置いておいた水差しからコップに水を注ぐ。こんな風に遠慮なく、他人を頼るこいつの姿は常になく珍しい。正直なところこのくらいの距離感が丁度いいのではないかと思うが、ナマエの生意気ながら変に遠慮がちな性格上、普段からというのは無理な話か。
 容器半分ほど水をついで水差しを置いた。コップ片手に振り向き、じとりと汗ばんだ彼女の体とベッドの隙間に手を差し入れて引き起こしてやる。のろのろと億劫そうなナマエの背を支えつつ、そのままコップを手渡した。

「大分、汗を掻いたな。着替えるか?」
「そう……します、……あの、」
「ん?」
「……ありがとう、ございます」

 お礼だけでも言っておこう、とそう告げて、ひんやりとしたコップに口をつける。舌を潤し、喉を伝い落ちていく水の温度が心地いい。 視界の隅で、スモーカーさんが「構わねェ」と頓着する様子もなく短く告げた。

 空になったコップをスモーカーさんに返して、ふう、と息をつく。目先の乾きが満たされたせいで、ようやく体を重くする不快感に意識が向いた。……汗で湿った寝間着がまとわりついて気持ち悪い。スモーカーさんが言い出してくれた通り、早く着替えてしまいたい、と思った。

「熱も下がらねェし、今日は風呂に入らねェほうがいいだろう。体拭くもんだけ持ってくる、待ってろ」
「……あ、……」
「着替えは自分で出しておけよ。おれにクローゼット漁られるのが嫌ならな」

 ……それは確かに、ちょっと、嫌かもしれない。朦朧とした頭でもなんとなくそんな判断はついたものの、背中からスモーカーさんの手のひらの温度が失われてしまったのをどことなく物寂しく感じてしまったのもあって、上手く自分の感情が整理できなかった。引き止めようと伸ばしかけた手が行き場をなくしているうちに、スモーカーさんは寝室の扉をくぐって部屋を後にしてしまう。
 ……こんな些細な孤独感にすら、簡単に押し潰されてしまいそうな気持ちになって、今のわたしの弱さは余りにも、どうかしてる、と自覚した。

 重い体を引きずって、布団を纏ったままずるずるとベッドから降り、衣装棚の前に座り込んで替えのパジャマを引っ張り出す。下着……は、まあ、いいか。引き出しを閉めてふと耳をすませば、ドアの向こうからたらいか何かに水を張る音が聞こえてきた。そんなことで安心して、着替えを抱えて再びベッドの上に這い上がろうとした……のだが。
 体が、本当に、重い。だるい。つらい。思いのほか体力を消耗しているらしく、こんな簡単な、自分の身を引き上げることすらも適ってはくれなかった。床にへたり込んだまま、ベッドのへりに手をかけて、ぜいぜいと息を吐く。寒いし、熱いし、頭が痛くてぐらぐらする。そう言えば、朝から食欲も湧かなくて、何も食べていなかったんだっけ……。


「――ナマエ、流石に着替えは手伝わねェほうがいいだろう。タオルを置いて少し席を外すから、済んだらまた……って、何してんだ、お前は」
「スモーカー、さん……」

 寝室に戻ってきた瞬間目に入った、ベッドの横で掛け布団を被りながら蹲っているナマエの姿に、思わず溜め息を吐いた。一瞬目を離しただけでこれか、やはり放ってはおけないらしい。

 水を張った容器を一旦サイドテーブルに置きやってから、しゃがみこんで小さなナマエを抱え上げ、ベッドの上に運んでやる。しかし、毎度思う事ながら、少し体重が軽すぎやしないだろうか。普段も飯はちゃんと食っているため、栄養不足ということはないはずだが……。むしろ、一般的な女の体重というものがそもそもこの程度なのかもしれない。
 それにしても、なんとも頼りない生き物だと眉を寄せた。今後手放すつもりはないとはいえ、いつでも守ってやれるわけではないのだから、何かしら自衛の手段は覚えさせたほうがいいのかもしれない。何せこいつはトラブル体質だ、最悪のケースを想定すれば海楼石の銃弾でも持たせておくべきだろうか。

「ありがとう、ございます。なにから、なにまで……」
「体調の所為だろう、気にするな」
「……あの」
「なんだ」
「出て、行かないで……ください」
「馬鹿、お前……」
「おねがいします、……着替えるの、手伝ってもらっちゃ、だめ……ですか」
「…………。……」

 スモーカーさんはなぜか一瞬、面食らったような顔をした、ように見えた。……さすがに、図々しかっただろうか。スモーカーさんからしたら、わたしなんてただのお子様だろうから、甘えてしまってもいいかなんて、寝惚けた頭が思い違えてしまったのかもしれない。それに、もう一度この部屋からスモーカーさんが離れてしまうのも不安でつい、引き止めてしまった。やっぱり今日のわたしは……、いつになく情けない。

「あ、その。スモーカーさんが、いやなら……」
「待て。……いや、分かった。確かに今のお前にゃ体力的に無理があるしな」

 柄にもなく葉巻を咥えていないせいか、どうにも自分に余裕がない気がして、再び溜め息を吐き出してしまった。理解していたつもりだったが、しかし、ここまでとは。こんなことを頼んでくるのは相手がおれだからなのか、それとも単に寝惚けてると誰の前でもこうなるのか……。どちらにせよ、あまり思わしい事態ではないのだが。

「……こっちに背中を向けて服を脱げ。上半身だけで構わねェな」
「はい、……」

 彼の指示通りにのろのろと体を反転させ、一応ズボンを先に履き替えておいて、そのあと前で合わせていた寝間着のボタンを外していく。会話が途切れるなか、背中の方からちゃぷ、という水音と、スモーカーさんがタオルを軽く絞っている音が大きく耳に入ってきた。

 妙に誘惑的な衣擦れの音がして、ナマエは上半身を覆っていた大きめのシャツを肩からするりと脱ぎ落とす。……背中のファスナーがどうのと脱がさせられたときにはもっと色気のある下着をつけていた気がするが、よもやあれもヒナが選んだものだったのだろうか。
 そんな邪推をしている間に露わになったのは、未だ満ち足りていない体の膨らみと、柔らかな曲線――それは、空恐ろしくなるくらい、しっかりと女の身体を象っている。この段に来てようやく、この小さな少女は初めから子供ではなかったのだと、そんな当たり前のことを理解させられた気がした。

「スモーカー、さん……?」
「……、……なんだ」
「どう、したんですか」
「いや」

邪な考えを振り払って、彼女の背に濡れタオルを押し当てた。心地好さそうに熱っぽい吐息を零し、ナマエは無防備に身を委ねてくる。男の前で素肌を晒しているというのにまるで緊張する様子もない。これがナマエの本心だとすれば、どうやら幸先は悪そうだと憂いたくもなる。

 ナマエの脇にタオルを通しながら、思案した。一体どうして……、こいつなのだろう。昨日、彼女がおれを受け入れて、家族だのと生半可なことを口にしたとき、そうではないという反発と共にようやく名付けることができた感情があった。つまり、易い言葉に替えれば――おれは、ナマエに惚れていたのだ。それも、随分と以前から。
 何故気付かなかったのか、我ながら鈍いものだと思う。だが実際、おれとナマエとの関係は愛だの恋だのと浮かれたものでは無かったし、ある種の思慕に気づいた今も、この感情は相変わらずの生温さを保ち続けている。かつて女に惹かれたことはある、苛烈に肌の触れ合いを求めたことも。だがそれは――一晩で片が付くつまらない何かで、白けた朝を迎えるたび、おれは所詮こんなものかと粗雑な諦念を覚えていた。だからこそここまで中途半端な、それでいて心地のいい大切な何かを知ったのは……初めてだったのだ。

 そうして彼女の左肩から肘にかけて布地を滑らせ、らしからぬ包帯の前で立ち止まった瞬間に、そんな思考をふと途切れさせる。……そういえば、こちらの手当てのことを失念していた。

「――おい、ナマエ」
「……は、い?」
「腕の包帯はどうする、替えるか?」
「あ……」

 突然腕の話題に触れられて、ぎくりとして身を引いてしまった。咄嗟に左手を体の陰に隠し、スモーカーさんを見上げる。わたしがいきなり警戒した理由がわからなかったのだろう、スモーカーさんは一瞬瞠目して、そのあと落ち着かせるような声色で疑問を口にした。

「どうした」
「いや、……あの、いいです」
「……? だがお前、昨日からそのままじゃねェか。雨にも濡れたし、衛生的にも……」
「だいじょうぶ、ですから。見ないでいいです、その、……あまり、気分のいいものじゃ、ないので」

 目を伏せてゆるゆると微笑むナマエの姿に、心臓が抉られるような心地がした。

 ……気に、しているのか。勿論、当然のことではある。おれはあの病室で一度、彼女の傷を目にしてはいるが……この分だと、言わない方がいいのかもしれない。傷を勲章としたがる兵士や海賊と、ナマエの価値観は当然違う。というより、そもそもこいつは――女なのだ。
 改めて、思い知らされるような気がした。海賊から受けた拷問の、それも最も厭う煙草による火傷痕を、こいつは一生背負って生きていくのだということを。

「……分かった、無理強いはしねェよ。だが近いうち医者に替えさせろ。いいな」
「はい、……ありがとう、ございます」

 この火傷を見たら、スモーカーさんが傷つくかもしれない、と思った。昨日の話でも、この人はこの傷についてやたらと責任を感じていたし、たとえ少しでも……この人が遠ざかってしまうような可能性があるなら、今は避けていたかった。



 それから、暫くの間互いに黙り込んで、部屋には小さな摩擦音と、時折軽い水音が響くだけとなった。黙々と手を動かしているうちに苦行に近い数分が過ぎ、頃合いだろうとおれはようやくタオルを容器に戻して一息ついた。

「――そろそろいいだろう。ほら、冷えねェうちに着ておけ」
「ん……は、い」

 返事をしつつ、しかし動こうとしないナマエは迂闊にもうとうとしているので、仕方なく彼女が取り出したらしい寝間着を広げ、さっさと袖を通させて、ついでに正面を向かせてボタンを掛け合わせてやる。素直に従いながら舟を漕ぐナマエを眺めつつ、いくらなんでも甘やかしすぎな気もしたが、まあ、今日くらいは構わないだろう。

 なんだかひどく、眠かった。スモーカーさんがやたらと甘やかしてくれるから、何もかも忘れて、このまま眠ってしまえそうな気がした。ああ、けれど――そうしたら、またこの人は、どこかに行ってしまうのかもしれない。それは、いやだ。今にも閉じそうな目を瞬いて、なんとかスモーカーさんを視界に捉えた。その途端、肩に回された腕にそっとベッドに横たえられて、ふわりと布団を掛けられるのをぼんやりとした頭で認識する。

 されるがままに枕に埋もれる、頼りなげにこちらを見上げる彼女と視線を通わせた。相変わらずの、幼い顔立ちだ。正直なところ、ナマエという人間が余りにも幼すぎるというのは、ここまでおれが自覚出来なかった一因であると思う。年齢差はどうとでもなる話だが、なにぶんこいつはうんざりするほど初心なのだ。以前のおれならまさかと鼻で笑うだろう、まさかこんなガキに惚れるとは。

 おれを見る彼女の目がどうにも不安そうなので、紅に色付いた頬にそっと指先で触れてやる。ナマエは小さく吐息を漏らし、心地好さそうに目を細めた。

「つめた、いです……ね」
「嫌か?」
「いえ……、そのまま、……」

 スモーカーさんが、無骨な手に似合わない、酷く優しげな仕草でわたしの肌を撫でている。夢うつつな意識の中で、しかし彼がちゃんとそこにいると言う実感に、今度こそどこまでも、安心してしまえる気がした。

「……ナマエ」
「……、はい……なにか?」
「いや、……」

 色づいた頬を辿り、吸い付くように柔らかな皮膚を撫で、汗ばんだままの頭皮に指を巡らせた。
 こんな触れ方をしても、珍しく照れもしない――そんな余裕もない――少女の表情に、まるで受け入れられているような錯覚を覚えて、妙な気分になる。今なら何をしても、許されてしまうような……そんな邪心が、鎌首を擡げてこちらを見ていた。自分の感情に正直になってしまえば、今まで当たり前のようにあった枷を軽率に踏み越えてしまいたくなる。我ながら辛抱のない人間だと呆れたくもなろう。

 しかし、確実なことが一つある。少なくとも今のナマエは、特に男女関係面においてひどく潔癖かつ純情で、本人の言を借りれば辟易するほど"乙女"だ。こうやって甘えてくるのも、恐らくはおれと「なにかの間違いが起こる」なんてことは絶対に無いと信じきっているからに違いない。同意無くして手を出せば、このぬるま湯のような関係を失うだけならまだしも、最悪ナマエを傷つける結果になるだろう。それだけは避けたかった。それを思えば……今後、寝惚け眼のこいつに関わるのは止めたほうがいいのかもしれない。正直なところ、辛抱なんぞは生まれてこの方した事もない。この先、どこまで気を遣ってやれるかも分からなかった。

「……スモーカ、……さ」
「ん……どうした」
「……眠たいです」
「それならとっとと寝ちまえ。起きてるよりは楽だろう」
「それは、……そう、なんですが」

 ベッドからやたらと重たい腕を引っ張り出して、わたしの頬を覆っているスモーカーさんの手の甲に触れた。乾いていて、冷たい、心地いい感触だ。大きな手に出来得る限り指を絡ませて、そっと頬を擦り寄せた。

「不安、で――」

 黒くしとやかな瞳が頼りなげに揺蕩う。もとより涙を湛えていた瞳が湖面のようにゆらゆらと満ち、柳のような睫毛が小さく震えるのを見て、胸に広がったこの感情の名前を、おれは知っていた。

「わたしが、……目を閉じても、ちゃんと……ここに、いてくれますか」
「……」
「どこにも、行かないで……ください」
「ナマエ」
「スモーカーさんがいてくれないと、……悪い夢を、見るんです……」

 彼女の黒い、鮮やかな瞳が揺らいで、はらと雫が一粒、頬を伝って滑り落ちる。綺麗に泣くものだと感心しつつ、初めて見るナマエの涙に、打ち震えような感覚が背筋を這い上がるのが分かった。そうだ、……こいつが泣くのを見るのは、これが――初めてなのか。


「一緒に、いてください」


 震える声で紡がれる、いつかも聞いたその言葉。

 ナマエはとても、気丈な少女だ。これまで……色々なことがあったが、それを受け流したり、真っ向からぶつかったりしながら、きっと何とか耐えてきたのだろう。その彼女が今、弱々しくおれの手を握りしめ、泣いている。
 込み上げた感傷に逆らう気もせぬまま、彼女の頬に当てた手を傾けて、顔を寄せた。これはきっと、おれのエゴなのだろう。それでも、縋るように、美しいくらい純粋に涙を零して、おれを求めるナマエをきっと――愛しいと、思ったのだ。

「――、っ、……ん……」

 唇に冷たい感触が降りた。

 塞がれた呼吸が、息苦しい。熱でぼやけて、酸素が足りないおかげでふわふわしていて、思考はどうにもままならない。なにが、起きているのか、わからない。
 けれど、柔らかな仕草が拒絶するには優しすぎて、切なげに舌の上を転がるスモーカーさんの吐息はとろけそうなほど熱くて、訳がわからないなりに振り払おうとも思えなかった。

「――……っは、っ、……あ……?」

 食んでいたやわな少女の唇を離して、潤んだ眼差しをじっと見つめ返した。何をされたのかまるで理解できないようで、ナマエはただ苦しそうに息を吐き、小さな疑問符を浮かべてみせる。色気もなにもあったものではない、が、この青臭い少女のそんなところに内心安堵している自分も、なかなかどうして奇異ではないか。

「そのまま寝てろ、ナマエ」
「……? な、……」
「どこにも行きゃしねェさ」

 獣が親愛を示すかのような仕草で、彼の鼻先がわたしの濡れた頬に擦り寄せられる。睫毛が触れ合うほど近くにある彼の目は、どこまでも深く、穏やかに凪いだ色をしていた。ああ、スモーカーさんの目が、こんなに暖かな色をしていたなんて、……きっと今まで、知らなかった。

「ほんと……ですか」
「あァ」
「なら、……なら、大丈夫です」

 手を伸ばし、スモーカーさんの首に腕を回して、そのまま自分の方へと引き寄せた。スモーカーさんが耳元で少し驚いたように息を吐く。離さないよう、きつく、強く、抱きしめると、スモーカーさんもいつしかわたしに応えてくれていた。

 すがりつく細い肩を抱き寄せる。触れ合う肌はかつてなく熱を帯びていたが、先程触れた唇に比べれば大した温度でもない。ナマエの腰を掬い上げ、もつれるようにベッドに身を投げ出した。明日の朝、ナマエの狼狽する様子を拝めるかもしれないが、これくらいなら今までとそう変わらない。起きたときには今まで通り、しっかり子供扱いをしてやるから、きっと構やしないだろう。

 柔らかで心地いい煙のような感触に包まれるなか、わたしはいつしか、穏やかな眠りに落ちていった――。


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