No Smoking


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 驚かないで聞いてほしい。というのは、わたしの現在の状況についてである。

 端的に言おう。わたしは今、物置と化した薄暗い執務室で、何故か真っ黒のセーラー服姿のまま、雑巾とバケツを手に、どう見ても堅気じゃないおやじさまから、射殺さんばかりの強烈な視線を頂戴している。一体なんでこうなったのか。

「なんじゃァ、お前は……」

 今の格好はどう見たって怪しい者だけど、わたしは怪しい者ではございません。はあ、ボルサリーノさんと兄貴から忠告はされてたのに。というかこの人、本当にいくら何でも、あまりにも、怖すぎないか。どう見たって正義を背負う側の人間じゃないだろう。こんなの見てしまったらヤクザなスモーカーさんなんて可愛いもんだ。むしろ神の使いか何かだ。正義の味方スモーカーさん、あなたの背後から光が差して見えるよ。
 しかしヤクザというより、どちらかといえば極道という言葉が似合いそうなお方だ。クザンさん的な長身がさらにその威圧感を倍増させている。しかも赤スーツに薔薇って。おいおい、しかも待って、なんか左肩の辺りに和彫りしてないかこの人。海軍とは一体……なるほどジャパニーズマフィア。オーケー?

 ってふざけてる場合じゃないって。

 ああ、ちくしょう。クザンさん、絶対に許さないからな。こうなったのもぶっちゃけ全部あの人のせいだ。本気で許さない。このおやじさまの不興を買った暁にはクザンさんを末代まで祟ってやるからな。なんつってここで死んだら末代はわたしか。あっはっは。ちくしょう。

「……うっとオしいのォ……」

 もう、なんかめっちゃ嫌われてるじゃないですかわたし。そんな死刑宣告を聞きつつ、わたしの脳裏に浮かぶのは此処に至るまでの走馬灯であった――。

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