立海 | ナノ

悔しいけど一目惚れ

「丸井はどうして赤也と付き合ってるんじゃ?」

授業の合間の僅かに設けられた休み時間に、仁王は何食わぬ顔で俺の席に近付いてきたかと思えば何の前振りもなくいきなり質問をしてきた。なあとかねえとか合間に一呼吸挟まないのは仁王らしいといえば仁王らしいけど、質問をされる側の人間としてはそういったワンクッションは欲しい。特にこういった類いの質問には。

「何でって、赤也が俺に告ってきたからだろぃ」

付き合うきっかけになったのは言った通り赤也からの告白だった。告白された時は自分でも信じられない程にあっさりとOKを出してしまっていた。今でもどうしてあんなにあっさりとOKしてしまったのかは疑問だが、今は赤也と付き合えて幸せなのだから良しとする。仁王に言わせればそこがどうも引っ掛かるという。

「あんまりにもあっさりすぎてたからのう。丸井は自覚しとらんかっただけで、赤也の事が好きじゃったんかなぁと思うて、な?」

何がな?だ、と言いたいところだがあえて口を挟まず仁王の持論に耳を向ける事にする。

「丸井は赤也が入部する前から気にかけとったじゃろ?」

得意気な顔をして喋る仁王に若干イライラしつつも実際に否定はできない事なので相槌を打って反応を示した。
大体、校門の上に飛び乗って何か叫んだ挙げ句に大衆の面前で教師に注意を受けるよう奴だったんだ赤也は。気にとめないほうが難しい。

「それに、あの一件で部活に顔を出さなくなった赤也をジャッカルと一緒に慰めに行ったりしたんじゃろ?」

あの事件とは赤也が立海が誇るビッグ3の面々、つまり幸村くん、真田、柳に勝負を挑んでこてんぱんに返り討ちに合った事だろう。しかしあれは試合を見てた分、相手が悪かっただけでそこらの人間より才能も技術もあってこのまま野放しにするのは勿体無いと思ったからであって。そう思ったからで…

「本当にそうなんか?お前さんの性格を知る限り、普通なら面倒だとかいってほったらかしにする場面じゃろ?」

弟との喧嘩で大人げなくも弟を泣かせてしまった時、拗ねて泣きながら部屋に籠った弟に対して折れて謝ったことも、いい加減にしろと怒鳴った事もない。面倒の一言で弟が自主的に部屋から出てくるその時まで放っておいた。これを頭の角に置いて考えると仁王の言い分にも頷ける。
初めて赤也を見たとき、同じ男であるアイツに対してかわいいと思った。幸村くんたちに負けて一人悔しがっているのを見たときも放っておけないと思った。幼い弟たちがすることなすことに心配し放っておけないとは思ったことは多々あったがそれとは違っていたように思う。テニス部に正式に入部して丸井先輩と呼ばれた事にドキリとしたこともある。初めて後輩を持った事に対する緊張だろうと思ってその時は流したけれど、今になって思えば名前を呼ばれてどきどきしたのは赤也だけだった気がする。

「俺の予想はあらかた当たっていたようじゃのう、丸井?」

自分の中にぐるぐると回っている考えを何とか否定しようと一人しどろもどろしている俺をからかうように仁王は笑っている。くそうこの詐欺師め!

「あー!丸井先輩、仁王先輩!俺次体育なのにジャージ忘れちまって、貸してほしいんすけど!」

赤也は前の時間が移動教室だったのか教科書とノートを片手に急いだ様子で目の前に現れた。それをグッドタイミングだとばかりに詐欺師仁王はにやにやした顔のまま口を開いた。

「そんなことより赤也、聞いて欲しいことがあるんじゃ。あのな丸井は…「あああああ赤也、ジャージなら貸す!俺が貸してやるから早く行けよ!時間ねえからほら早く!」

ジャージを赤也に押し付け、半ば強引に教室の外まで押し出した。そして押し出しながら実は俺が赤也に一目惚れしていたという事実を認めることが出来ずにただただ仁王の悪態をつくはめとなった。











赤也が殆ど出てないけど赤丸と言い張ります。ごめんなさい。赤髪の妙技師が世界一様に提出しました。


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