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『今日は見事に雨だねぇ、黒子くん』
「そうですね…。結衣さん」
『ん?何ー?』
「ボクのこと、名前で呼んでもらえないですか?」
『…ん?え!?』

部活のため、体育館に向かう途中の出来事でした。

「ロード削った分練習時間が余るな……どーする、カントク?」
「(一年生の実力も見たかったし……)
ちょーどいいかもね。5対5のミニゲームやろう!一年対二年で」

……はーい、何もできない役立たずなマネージャー(仮)デース。
私ほんとに何もできないし。見学に来たんですかねって言われてもおかしくない。
あれか、なんか、タオルとかドリンク?とか用意してればいいのかな?とか余計な事を考えていたら、知らないうちにゲームをすることになっていたとゆー。

「センパイと試合って…!」
「覚えてるか。入部説明の時言ってた去年の成績…」

あー…去年一年生だけで決勝リーグまでいったやつ!
新設校なのに、さすがです。リコ先輩。

けど、元気なのが一人。

「ビビることじゃねー。相手は弱いより強いほうがいいに決まってんだろ!行くぞ!!」

火神くん、相変わらずたぎってるね。
うーん。コレは本格的に私は何をしていればいいのか分からなくなっていく。逃げていい?どうせまだ仮入部の期間なんだし!
私いても何もできないし!
集中できなかったらダメだもんね!散漫にさせるのはよくない事!

というわけで、退散しましょう。

「結衣さん。そこにいてくださいね」
『(……いつの間に……)はい』

知らぬうちに私のそばにいた黒子くん――いえ、テツヤくんに釘を刺され、結局そのまま試合を見ることになった。
……私は問いたい。
マネージャとは一体なんなのかを。
というかそもそも、何もできない私がマネージャーになっても何の得もないではないか。うん、コレはテツヤくんに物申さねばならないな。
毎日必ずテツヤくんと一緒にここに通うから、マネージャーは止めたいと訴えよう。

ゲームは、ほとんど火神くんがひとりでやっているも同然だった。
あれ、やってて楽しいのかな。
というか、ダンクスゲー。私、生で見たことなかったよ、感動的すぎる。あれ、一回やってみたいな…!

それに反して。テツヤくんは何かを確かめるみたいにボールを取られてばかりだ。
え、コレ原作でどうなってるんだっけ?
お友達から借りて読んでたから全然わからん。あ、あれか、ミス何とかってヤツを発動するのか?
とかおもっていたら、まんまその展開に。おお、私の記憶力も捨てたもんじゃないな!

「一番イラつくんだよ!!」

おお、火神くん、カッコいいよ!
てかジャンプ力半端ない!私もあんなふうに高く飛んでみたいなぁ!
とかとか思っていると、火神くん、三人もつけられてる。
ですよね。私でもその判断しますとも。
ボールもってなくても二人は辛いよねぇ…。うん、がんばれ、火神くん。ここで小さく応援してるよ
そんなこんなしているうちに、先輩チームがどんどん点を取っていき、差をダイブつけられる。
おお、コレがバスケか。

「やっぱり強い…」
「てゆーか、勝てるわけなかったし…」
「もういーよ…」

諦めの言葉が次々と飛んでいく。
そんな中、やっぱり火神くんはあきらめていない。

「…………もういいって…なんだそれ、オイ!!」

あー、ヤバイですねぇ。暴力反対ですよー?

「落ち着いてください」

……見事な身長差で、見事に膝カックンを決めましたね。テツヤくん。
見事にもめてますね。
……これ、確かに見ているだけなら楽しいかも。

それから、何かを相談しているみたいな雰囲気だったけど、またゲームが始まる。

「……え…あっ」

―ばすっ―

「…え」
「……な」
「入っ…ええ!?今どーやってパス通った!?」
「わかんねぇ見逃した!!」

おお。目の当たりにするとすごい。
てか、怖い…。
あれでしょ。説明的に言うと。

――ミスディレクション。手品などに使われる人の意識を誘導するテクニック。ミスディレクションによって自分ではなく、ボールや他のプレイヤーなどに相手の意識を誘導する。つまり……彼は試合中「カゲが薄い」というより、もっと正確に表現すると、自分以外を見るように仕向けている――

『(コレが、元帝光中のレギュラーで、パス回しに特化した選手。頭の中でセリフが流れてくるってなんなんだろう……)』

すごい、みんなの士気がどんどん上がっていく。
あ、テツヤくんがボール取った。走った。ゴールに行った!
……あ。はずした。

「………だから、弱ぇ奴はムカつくんだよ。ちゃんと決めろタコ!!!!」

おお、ダンク!!

そして、一年生チームが勝った!

そして、夜。マジバにて。

「…………なんでまたいんだよ」
「ボクたちが座ってるところにキミがくるんです。好きだからです、ここのバニラシェイク」
「どっか違う席行けよ」
「嫌です」
「仲いいと思われんだろうが」
「だって、先座ってたのボクたちですもん」
『……ま、まあ、いいじゃない、ね。火神くん!』
「オマエは!」
『え、もしかして私の存在も見えてなかったの!?そんなに存在感薄いかな!?』
「あ、いや、お前がいたからこの席きたんだけど…」
『え?』
「い、いや、なんでもない!」
『そう?』
「……むっつりですね、火神くん」
「なっ!?」
『けんか止めようね!するんだったら私即効帰るから!!』

そういうと、少し静かになった。そのすぐ後に、火神くんは何かを考えるようにしてから、自分のお盆にてんこ盛りになっているバーガーをひとつテツヤくんに放り投げる。

「…ほらよ」
「?」
「一個やる。
バスケ弱い奴に興味はねー、が。オマエのことそれ一個分は認めてやる」
「どうも…」
『……そんな微妙そうな顔しないの』

食べ終わって、のみ終わって。三人で肩を並べてマジバをでる。

「……〈キセキの世代〉ってのは、どんくらい強ーんだ?」
「?」
「じゃあ、今の俺がやったらどうなる?」
「…瞬殺されます」
『…テツヤくん、もっと違う言い方しなよ……』
「ただでさえ天才の5人が、今年それぞれ違う強豪校に進学しました。まず間違いなく、その中のどこかが頂点に立ちます」

だと思うよ。
ああ、私のお願い。単純な事なんです。キセキの世代に出会いたくないだけなんです。
でも、この人たちと行動してたらそれは叶わないですよね…。
ええ、知ってます。

神様!恨みます!

「…ハッハハハ!いいね、火ぃつくぜそーゆーの。…決めた!そいつら全員ぶっ倒して日本一になってやる」

間。

「無理だと思います」
「ぅおいっ!!」

だから、テツヤくん。もっと言い方を……。

「潜在能力だけならわかりません。でも、今の完成度では彼らの足元にも及ばない。一人では無理です。
…ボクも決めました。ボクは影だ。…でも、影は光が強いほど濃くなり、光の白さを際立たせる。
光の影として、ボクもキミを日本一にする」

おお、テツヤくんかっこいいー。

「はっ、言うね。勝手にしろよ」
「がんばります」

そうして、私のトリップ生活が始まったのである。
元の世界に帰れないと思う。
けど、この世界の主人公達を見守るのも、悪くないと、私は思っていた。


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