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「オマエ、一体何を隠してる?」
「……?」
「…………俺は、中学二年までアメリカにいた」
『アメリカ!?帰国子女!?すごー!』
「…まあ、それはいいとして。こっち戻ってきてガクゼンとしたよ。レベル低すぎて」

おおう。言いますなぁ、火神くん。ま、仕方がないよね。
こっちはそんな好きな事に時間を避けるほど、自由な時間はないし。
中学なんて、どっちかって言うと勉強メインだしね。
そりゃあ、あなたが求めてるみたいなバスケはできなかったと思いますよ、火神くん…。

「俺が求めてんのはお遊びのバスケじゃねー。もっと全力で、血が沸騰するような勝負がしてーんだ。
…けどさっきいいこと聞いたぜ。同学年に〈キセキの世代〉って強ぇ奴らがいるらしいーな。
オマエはそのチームにいたんだろ?
俺もある程度は相手の強さはわかる。ヤル奴ってのは独特のにおいがすんだよ。
…が、オマエはおかしい。弱けりゃ弱いなりのにおいがするはずなのに…オマエは何も匂わねー。強さが無臭なんだ。
確かめさせてくれよ。オマエが…〈キセキの世代〉ってのがどんだけのもんか」

わー……逃げ帰りたい。全力で逃げ帰りたいよ。
というか、この喧嘩に私を巻き込まないでほしいなー。私、帰ってお母様の手作りごはんが食べたい。

黒子くん、かえりたいなぁー。
とか声かけられる状況じゃないのはわかっています。ええ、それはもう十二分に!
だってこの後の展開も私は知っているんだから。

「……奇遇ですね。ボクもキミとやりたいと思ってたんです。1対1」

バサッとカッコよく学ランを脱いでいる黒子くん、カッコいいですね。
で、私の帰りは遅くなるんですねぇ……。

そして始まる1対1。
素晴らしいほどの火神くんの圧勝。黒子くんの弱すぎるこの光景。
なんか、小型犬を大型犬がいじめているみたいな光景だ。

あ、イラついてる。だと思う。私も相手してたらさすがにイラつくと思うもの。しかも短気っぽい火神くんなんかはもっとイラつきますよね。

「ふざけんなよテメェ!!話し聞いてたか!?どう自分を過大評価したらオレに勝てると思ったんだオイ!」
「まさか.火神くんの方が強いに決まってるじゃないですか」
「喧嘩売ってんのか、おい…!どういうつもりだ…」
「火神くんの強さを直に見たかったからです」
「…はぁ!?」

その気持ちは大いにわかる。
でも。

『火神くん、お疲れ様』
「あ?ああ……」

ものすごく呆れているのがすごくわかる。こういうのを見るのはちょっと楽しいと思うとか、私性格悪すぎる。

「あの…」
「あーもういいよ。弱ぇ奴には興味ねーよ。…最後にひとつ忠告してやる。
オマエ、バスケやめた方がいいよ。
努力だの何だのどんな綺麗事言っても、世の中には才能ってのが厳然としてある。オマエにバスケの才能はねえ」

うわー…言ってくれるなぁ。
私部外者だから何も言わないけど。
けど、黒子くんがそれでなんかなるほど弱い人ではないということも私は知ってるもの。何も言わないのもたまにはいいと思う。

「それは嫌です」
「…………!?」
「まずボク、バスケが好きなんで。それから、見解の相違です。
ボクは誰が強いとかどうでもいいです」
「なんだと!?」
「ボクはキミとは違う」
『黒子くーん。そろそろ帰ろーよー』
「あ、はい。今から行きます。結衣さん」

私は呼びかけた。そろそろこの会話も終盤だ。だったら、私が今ここで発言しても何の邪魔にもならない。
一度私に向き直った黒子くんはもう一度火神くんに向き直り、言った。

「ボクは、影だ」



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