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「……きゃあああ!!」
『リコ先輩!失礼ですって!』
「ご、ごめ…!」
「うわぁ、何?……うおっっ!?」
「いつからいたの!?」
「最初からいました」
「ウソォ!?」
『本当に影薄いんだね、黒子くん…』
「結衣さん……」
『あ、ごめん』

思わず本音が漏れてしまった。いけないいけない。
しかし……。こんなにもたくさんの人が居たのに、誰も気付かないという光景は本当にすごかった。
ごっつい男子生徒がわたわたしているのもなかなか楽しかったです。

でも。

「……え?じゃあつまりコイツが!?〈キセキの世代〉の!?」
「まさかレギュラーじゃ…」
「それはねぇだろ、ねえ、黒子くん」
「…?試合には出てましたけど…」
「だよなー…うん?」
「え?……え!?」
「えええええー!?」

信じらんねぇ!!

「ちょ、シャツ脱いで!!」
『ま、待って!!私向こう向くからそれからにして!!』

慌てて後ろを向く。

「オイ、ちょっと聞きたいんだけど…帝光中とかキセキのなんたらとか」
『?』

火神くんの言葉を聞きながら、練習は普通に再開していた。



『黒子くんって、マジバ好きだよね』
「はい。ここのバニラシェイクが特に好きです」
『ふふ』
「結衣さん、なんだか嬉しそうですね」
『……そうかも。だって、黒子くんが優しいから』

それは本当に思う事だった。
何で何も聞いてこないんだろう。怪しすぎる私の身元を。ま、それは私を養子縁組してくれた黒子くんのお母様にも言えることだけど。
相変わらず、周りに興味があるのかないのかよく分からないけど、それでも、黒子くんのこの気遣いは嬉しい。

この世界は、私は漫画だってことを知っているけど、目の前にいる人たちや、これから出会う人たちはそのことを知らない。
言っても、信じてもらえないし。

『そういえば、黒子くん』
「なんですか?」
『いっこだけ、私を守って欲しい事があるんだけど…』
「…守って欲しい事?」
『うん、あのね』

そのとき、私は見てしまった。
バーガーをお盆の上に山のように積んでこちらに歩いてくる人物を。

「あ?お前は確か…」
『火神くん、それ、全部食べるの…?』
「当たり前だろ。相席いいか?」
『あ、どうぞ』

黒子くんも一緒だけど、と言おうとしたけれど、さすがにわかっているだろうと思って何も言わなかった。

「ぐおっっ!?」
『何!?』
「どうも、…育ち盛りですね」
「どっから…つか何やってんだよ?」
「いや、ボク達が先に座ってたんですけど…人間監察してました」
『気付いてなかったんですか……』

どれだけ黒子くんは存在感がないんだろう……。
ちょっと、何か自分がすごいと感じてしまった。

『…私は、黒子くんを簡単に見つけられるのにね?』
「…結衣さんは、特別です」

微笑んでくれた黒子くんがかっこよくて、なんだかむずがゆくなる…。

そんな中、火神くんが割っては言ってくる。

「それよりちょっとツラ貸せよ」

うわぁ…けんかが始まりそうな感じだわぁ……。



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