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それから、みんなが格好でDVDとかをみて勉強している間は私はすることもできることもなかったからそのままテツヤ君か家に直帰する日があった。
そして試合当日。
私は今回少し遅れていくこととなった。といっても、頼まれごとをされたからなんだけど。
寝不足だ……。
でも、ああ言う細かい作業はやってて楽しいよね、うん。
気分的にはちょっと開放感がある。ご機嫌で道を歩いていると、目の前にものすごく見慣れた金髪が目に入った。
瞬間の私の体の硬直具合は凄まじかったと思う。
「…?何みてんだよ?」
「今朝のおは朝の録画っス。朝は最近ロードワークで見れないんで」
「ずいぶん勤勉になったな、オイ。前はサボってばっかだったのにね
「いや、ウチの練習、ちょっとアレ、やりすぎ…」
「チョーシ乗んな!シバくぞ!」
聞き覚えのある声たちだ。
いや、寝不足だから幻覚でもみてるんだ。きっと。うん。そうに違いない。
そうじゃなかったらなんの嫌がらせですかね、神様。
この際試合に少し遅れることも厭わない。少しペースを落として歩こう。あの黄色いのにみつかるとめんどくさいに決まってるんだから!
「ん?」
『!?』
「あっ!」
結構な距離がある上に、なんでお前は後ろを振り向いたんだ!?
振り向く必要何もなかったよね!?
「結衣っちー!!」
『抱きついてくるな!』
「うごっ!?」
あ、避けれた。
高尾君の時もこのくらいの反射神経ができると嬉しいんだけど……。
「避けなくてもいいじゃないっスかー!」
『なんで自分から地獄に落ちなきゃならないのかがわからない』
「そこまで!?」
『人気モデルさん。立場考えてよ』
「おー、結衣か」
「お久しぶりです、笠松さん!
「俺の時と態度全然違う!」
『しょうがないよ、笠松さんだもん。黄瀬君なんて相手にしてられないわ』
「扱いも酷いっっ!!」
『黄瀬君だから。仕方ないよ』
「全部それで片付けないで!!」
そんな会話をしていると、黄瀬君が突然顔をしかめた。
「げ…」
『?』
「?なんだよ?」
「…最悪っス」
その一言を呟いたのだった。
**
『うあー、結構遅れちゃったなー……』
それもこれも、あの金髪野郎のせいなんだけど。
何もあそこまで目引き止めなくてもいいじゃん。笠松さんがいてくれて本当に助かった…!
早くみんなのところに行って渡さなきゃれせめて試合が始まる前に!
そう思って、私は必死に走って誠凛高校の控え室に向かった。
そして部屋の前について扉を開けた瞬間。
「次の試合に勝ったら…みんなのほっべにちゅーしてあげる!どーだ!れね
『……………………遅くなりまして、申し訳……ございません』
すっごく微妙な時に入ってきてしまったけど、他に何も言えなかったのも確かなのです。
しかし、みなさん私の存在に気づいていなかったらしく…。
「うふっ、てなんだよ…」
「星出しちゃダメだろ…」
「バカヤロー!義理でもそこは喜べよ!」
……いま、確実に日向先輩こ最後の一言でリコ先輩が撃沈した。
無自覚にそう言うことをやってのける人が一番怖かったりするよね、うん。
と、復活した(といっていいのかわからないけど)リコ先輩ががばっと起き上がって怒声を浴びせる。
「ガタガタ言わんとシャキッとせんかボケ――!!去年から返すんだろうが、ええおいっ!?一年分利子ついてえらい額になってんぞコラ――――!!」
ぐわぁっ、と怒り心頭のリコ先輩をどうどうとなだめる水戸部先輩。…お疲れ様です。
『…リコ先輩、大丈夫ですよ』
「あら、結衣ちゃん。来てたのね」
「はい。遅くなってすみませんでした。途中、あの変態モデルに捕まってしまったものですから』
「……黄瀬君も浮かばれないわね」
『?何が浮かばれないんです?』
「いえ、なんでもないわ」
『そうですか?』
「…………。ねえ、結衣ちゃん?」
『はい?なんですか?』
「あなた、マネージャーよね?」
『……えっと、不本意ながら』
「はっきり言うわね。でも、マネージャーは否定しないのよね?」
『ええ、まあ。しても無駄だってもうわかってますか……』
その時、リコ先輩がにやっと笑ったのが見えた気がする。
なんでだろう。なんでこんなにも嫌な予感がしてるんだろうか。いやいや。勘弁してください、マジで。
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