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少しだけ見慣れた緑頭の人が認識できてしまってなんだか悲しくなってくる。
私、一番最初に「キセキの世代」にあんまり関わりたくない、ってテツヤくんにお願いしたような気がするんだけど、そんなものは関係ないらしいですね、はい。
……もっと黒子のバスケのファンの子を連れてきなよ!!

と私が内心で思っていても仕方のないことでして。

会場に堂々とした様子で入ってくる秀徳高校の面々はとにかく私に言わせて見れば、みんな大きい。不公平だと思う。
どうして男女の身長差はこんなにもあるのか。
くそ……恨めしい。

と、火神くんが動いた。

「よう、お前が緑間真太郎…だろ?」
「……そうだが、誰なのだよキミは?」

知らないはずがないでしょう、と思いつつもあまり関わりたくないから黙っている私。それよりも気になるのは、緑間さんが手に持っているクマのぬいぐるみのほうが気になる。
じっと見つめていると、何故かきゅっという音がかすかに聞こえた。あと、かすかにシンナーの匂い。

『……え』

ふと視線を下に上げてみると、そこには緑間さんの掌に自分の名前を書いてちょっと満足そうにしている火神君がいた。

『…って、そのマジック私のじゃ!?』
「おう、借りたぜ結衣」
『事後報告!……もういいよ』
「何も良くないのだよ!しかもコレ油性ではないか!」
『それを私に言われてもしょうがないですし。私がやったんじゃないんだから』
「そもそも筆箱に油性マジックを入れているのが悪いのだよ!」
『意味不明なこと言わないでくださる!?常識でしょ!?』

何故か理不尽な責めをくらう私。何故だ。

「フツーになのってもいかにも「覚えない」とか言いそーなつらしてるからな、オマエ。先輩たちの雪辱戦の相手にはきっちり覚えて貰わねーと」
「…フン、リベンジ?ずいぶんと無駄なことを言うのだな」
「あ?」

その時、遠くからこちらをずっと見て時には笑いをこらえていた高尾君がひょっこりと出て来た。

「やっ、結衣ちゃん!さっきぶりだね」
『ひっ!』
「あ、ひっでー、その反応」
『あ、あなたが私にしたことを思えば当然な反応だと思うけど!?』
「えー、ちょっと抱き上げただけじゃん?」
『身長差を考えて!!』
「まあまあ、ところで誠凛さん、そのセンパイから何も聞いてねーの?」

思いっきり話をすり替えられた感が半端ないけど、とりあえずこの意味のわからない人から逃げられた。
そのことに安心しよう。
そういえば、原作はどうやって進んでいたか…。
トリップとかしても何もいいことなんてないじゃない……。皆ナニを目的にしてトリップしたいとか思ってるわけ?

……あ、キャラと話したいんだよね。そうだよね。うん。分かって入るつもりだった。
でもこの場ではっきり言えることは、みんなが思っているほどここの人たちは優しくない!!

いや、一人で力説しても仕方ないんだけどさ。

と、高尾君の言葉が耳に入ってくる。

「去年、決勝リーグで三大王者全てにトリプルスコアでずたずたにされたんだぜ?」

先輩たちの表情が、悔しそうに歪んだ。
きっとそれが事実だからなんだろう。

「息巻くのは勝手だが、彼我の差は圧倒的なのだよ。
仮に決勝で当たったとしても、歴史が繰り返されるだけだ」
『そんなことない……!!』

思わず、大声で否定してしまった。
しまったと思ったど、もう戻れない。

『過去は過去だわ。去年と同じように見ないでよ!』
「その通りです。緑間君。過去の結果でできるのは予想だけです。勝負はやってみるまでわからないと思います」
「…黒子」
『テツヤ君……』

思わぬ助けに正直ほっとした。

それから、秀徳高校は試合を始めるために私たちの前から立ち去ったのだった。

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