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『皆は、本当にバスケが好きなんだなって伝わってきますね。この空気から』
「ええ、勿論よ」

リコ先輩は、私の言葉を聞いてくれた。そして答えてくれた。
なんとなく、なあなあでここにいる私の存在には、全く違和感がないような振りをして。

それからのテツヤ君と火神君の活躍は凄かった。
テツヤ君はミスディレクションを行使し、次々とパスを回していき、火神君は回ってきたパスを確実に入れていく。

気付くと、第1Qは終了していた。
点数は新協8、誠凛23と明らかな差をつけての終了だった。
皆がベンチに戻ってくると興奮したようにスタメンに声をかけていく。
リコ先輩はそれでも気を抜くなと皆に一括し、テツヤ君に交代を言い渡した。

「黒子君!交代よ。ここからしばらく黒子君は温存しなきゃならないわ。攻撃力が落ちる中盤の間、いかに点差を縮めさせないか」
『見てて思ったこといってもいいですか?』
「結衣ちゃん。どうぞ」
『では、失礼して。見てて思ったのが、お父さん以外の4人に脅威になるような選手がいなさそうだなって思ったんです。個人スキルで言うなら、誠凛の皆のほうが確実に高い』
「そう、この試合、とどのつまり…これから黒子君が戻るまでの間、火神君がお父さん相手にどこまでふんばれるか、それに尽きるわ!あの高さに対抗できる可能性があるのはキミだけなのよ!」

その言葉を聞いて、火神君の表情がしまったのが私にも分かった。

「まかせろ!っスよ!」

その頼りになる表情を見て、結城をもらったのはきっと私だけじゃないと思う。

そして、第2Qが始まった。
さすがに第1Qと同じようにはいかない。分かっていても突きつけられる現実というのはある。緊張が高まる中での試合は進んでいく。
そんな中で、気付いたのはリコ先輩だった。
なんとなくそちらのほうを見たとき、とても不思議そうな顔をしていたのだ。

なんだろうと思うけれど、試合をしっかりと見ていても、私にはいまいちぴんと来なかった。でも、数分、試合を食い入るように見つめていると、あれ、と何か疑問が引っかかった。

コート内でバッシュのスキール音が響く。ボールをドリブルする音が響く。
何度もボールを回されているお父さんについている火神君。お父さんがシュートをうとうとしたときに、火神君がジャンプしてそれを阻止しようとする。その当たり前の光景なのに、それに疑問が湧いた。

それに答えるように、お父さんが叫んだ。

「ナンデ?ナんかドんドん高くナってル…!?」

この時点で、新協は33点、誠凛は45点。
なかなか縮まらない差に新協が焦りを見せ始める。

「くそっ…差がつまらねーっ!!なんだってんだ!」

苛立ちの声がコート内に響いている。
でも、その苛立ちの下を見て、私もリコ先輩も少し戸惑っている。

「火神すげえ!!こらえるどころか全然負けてねー、カントク、特訓の成果でてるっスよ!」

周りの声が響く。でも……。

「…え…と、てゆーか…」
『ですぎってことは、ありません?』

その台詞に周りがぽかんとしたのがなんとなく分かった。



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