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「誠凛さんってあれ?スポ根系?」
「は?」
「いるんだよねよくさ〜、「助っ人外国人ずるい!」みたいな?別にルール違反とかしてねーし」

コート内の会話を微かに拾いながら、私はベンチに座っている二人に私の考えを述べる。

『もともと、外国人留学生は、ベンチに二人までは入れられるようにルール上ではなってるんだから、ずるいとは思わない。
それに、その選手だけがコート上で活躍しているかどうかなんて、この試合で分かることだし、その人一人の負担がどれほどのものかなんて現状では私たちには分からないじゃない?』
「……そうね、結衣ちゃんの言うとおりよ」
『強い人を呼ぶことが悪いとは思えない。それがあいて高校の戦術なら、仕方ないと思う。
第一、バスケは一人でやるスポーツじゃないんでしょう?だったら、ここまであの外国人を頼りきってきたあの人たちは、思い知る羽目になるよ』

リコ先輩に少しだけ助けてもらいながら、私はコートを再び見た。
日向先輩が、特に何の感情も載せず、普段どおりの表情で相手校のキャプテンの話を聞いていた。そして、聞き終わったのか首の後ろを少し書きながら、言葉を紡ぐ。

「楽かどうかは知んねーけど、そのポリシーなら逆に文句言うなよ?」

そういった日向先輩はとてもかっこいいと思います、はい!

『それに、規格外で言うなら、私たち誠凛高校にもいるじゃない!信じよう、皆を!』

笑顔を向けながらそう言ってからしばらくした後に、ベンチに控えている人たちの顔が赤くなった。なんだ、と思ったけれど、リコ先輩が間に入ってくる。

「結衣ちゃん、気にしないの。ほら、ちゃんと試合観戦してなさい」

まるでお姉ちゃんのようなリコ先輩の言葉に従いながら、私は言われたとおりに試合に見入った。

キュキュッ、とスキール音が響く。そんな中で、お父さんのシュート率ががくんと下がり始めた。
それを見た私の隣に座っているリコ先輩がにやりと笑ったのを気配で感じた。

「そう簡単には入らないわよ…、なんたって、火神君がお父さんに自分のプレイをさせてないからね!」
『…え?そんな高度なことを火神君が?』
「結衣ちゃん、そこそこ酷いこというわね」
「自分のプレイをさせない…?」

私の言葉に突っ込みを入れたリコ先輩。そこは軽く流してくださると嬉しかった。

「まあいいわ。とにかく、届かなくてもやり方はあるってことよ。水戸部君直伝でね!」
『水戸部先輩、ですか?』
「そう。黒子君と火神君に別メニューをさせていたのは覚えてるかしら?」
『ああ…そういえば、二人だけ別メニューって言い渡されてましたね』
「そう。その時にちょっとね。水戸部君を師匠にして火神君に技術を学んでもらったのよ」

そうなんだ。凄い。やっぱり誠凛高校の皆はちゃんとした技術を持ってるんだよね……。
やっぱり私はここにいても意味ないのでは?
マネージャーとは名ばかりなんだし、そろそろ皆が認めてくれればいいと思うのだけど、なかなかそうもいかないらしい。だって、今それをリコ先輩に言おうとしたら物凄く怖い笑顔で見られたもん。なんで私の言いたいことがわかったの!?

「やりたことをさせない、行きたいところに行かせない、そうやって相手を苦手な体制に追い込んで、プレッシャーをかけて楽にシュートをさせない!そうすれば届かなくても…」
『点を入れられる確立は格段に下がる……か』

バスケットって奥が深い。でも、本当にそれはチームプレイで成り立っているんだなって言うのもよくわかる。

新協の人たちがディフェンスに入っていくのが目にはいる。
その時、火神君がお父さんに宣言した言葉が耳に入った。

「ヘイ!2つ言っとくぜ。1つはこの試合中にぜってーお前のシュートを叩き落す」
『(……なんか凄い無茶振りな発言してる気がする……)』

原作をしっかりと読み込んでいない私は、この後どうなるのかとかまったくと言っていいほど覚えていない。
とりあえず、秀徳と桐皇と戦うってことぐらいしか覚えてない。
あと、どっかで必ず負けてた気がする。

「…もう1つは」

火神君がそういった瞬間に伊月先輩のパスがお父さんのほうに向かって投げられた。それに少し驚きながらもそのパスを受け取ろうとしたお父さんの前からいきなりボールが消える。
何が起こったのか理解できないお父さんは口をパクパクとさせている。
その間に、火神君がお父さんの後ろでダンクシュートを決めた。

「子供もけっこーヤバいかもよ?」
「てゆーか、子供で話し進めるのやめてください」

つまんなそうなテツヤ君の声が聞えた。



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