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「へ?黒子君先発?」

意外そうな声を出したのはリコ先輩。その様子をリコ先輩のうしろから見守っている私。

「黒子君には時間制限があるでしょ?シックスマンとして戦況見て出してくって言ったじゃない」
「お願いします」

……気のせいじゃなければ、テツヤ君の眸が爛々と輝いている。いや、この表現はおかしいか、光っているというほうがあっているに決まっている。
リコ先輩もそれに気付いたのか、少しあきれたような困惑したような表情で言う。

「なんでそんな血走ってんのよ?」

私はいたたまれなくなり、リコ先輩の制服をちょいちょいと引っ張った。
あ、ちなみに私はマネージャーなので、ジャージを着てます。制服は着ていません。というか、テツヤ君に無理矢理着せられた。

『リコ先輩。さっき私があっちの外国人選手に連れて行かれそうになったときのこと、覚えてます?』
「え?勿論でしょ?ウチの可愛いマネージャーを持っていこうなんて万死に値するわ」
『……ま、今のは聞き流します。で、その時に、テツヤ君相手の選手に「子供」扱いされたんですよ』
「……なるほどね」

私の話を聞いて納得してくれたリコ先輩。なんて話の分かる人なのだろう。というか、理解力がハンパないです。

「…ま、しょっぱなからカマすのも嫌いじゃないし…いーわよ!…ただし、いきなり切り札見せるんだから、中途ハンパじゃ逆効果よ。第1Qで最低10点差はつけなさいよ」

そうして、みんなの準備が整い開始のホイッスルが鳴り響いた。

『当たり前ですけど、ジャンプボールはお父さんなんですね…』
「そりゃ、あの身長だしね」

二人がジャンプした。けれど、ボールに先に触ったのはお父さんのほうで、新協高校が先制になる。
そして、お父さんが早速点を入れた。

『……え?何が起きました、今?』
「……ノーフェイクからのシュート…ディフェンスは火神君をつけていたのに、あっさり破ってくれちゃうわね」
『これは、かなりまずい状況だったりするんですか?リコ先輩』

そんなことを聞きながらも、会場がわっとわきあがって、そちらに視線をやる。すると、フリーで日向先輩がシュートを決めようとしていた。
やったあ!と思ったけれど、それは次の瞬間には全て崩される。完全なフリーでシュートを打ったにもかかわらず、そのボールはゴールに吸い込まれる前に、阻止され、お父さんの手にボールが収まってしまったのだ。

『あそこから届くの!?え、逆に凄い!!』
「……結衣ちゃん」
『あ、ごめんなさい。興奮しました』

冷気が身体を一瞬で包んだため、私は大人しく興奮を鎮めた。

ベンチにいる同学年たちが、その様子を見て不満そうな声を上げる。

「デタラメだろ、あんなの…。やっぱりずりーよ。外国人選手なんて」
『……そんなこと、言っちゃダメだと、思う』
「え?」

その時、コート内で、新協のキャプテンが日向先輩に何かを言っていた。


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