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『えっ』
「アイテ……日本低イ、ナんデも…」

……リアル、進撃の○人……。
なんなんだ、この身長の差は…。嫌味か、嫌味なのか。

私の横を通り過ぎていくその長身を見ながら、そんなことを思ったのでした……。

「何やってんだ、早く来い!」
「すみません、遅れましたー」
「なんでそこだけ流暢なんだよ!!」

チームメイトからそんなことを言われているお父さん。いや、見ているだけでいいなら、凄く面白い光景ですよ?

と、そこへ、相手高校の一人が日向先輩に話しかけているのを見つける。

「あ、そういえば海常に勝ったってマジ?」
「いや…練習試合でっスけど」
「なんだー、思ったよりたいしたことないんだ」
「カイジョー?」
「「キセキの世代」入ったとこ!教えたろ!」

その言葉に、少なからずムカッとした。
海常高校の人たちが思ったよりたいしたことない?ずいぶんを大口を叩いてくれるではないか。

「キセキノセダイ…、負け…?」

何故か呆然とその単語を呟いたお父さん。
あ、ヤバイ。この後に言われる言葉が思い浮かんだ。そしてそれをとめるすべが私にはきっとない。

「キセキノセダイに勝ツため呼バれタのに、ソんな、ガッカリダよ。弱くて」

いらっとした。
確かに海常高校は誠凛高校に練習試合で負けたけれど、試合をしたわけでもないこの巨人にそんなことを言われる筋合いはない。

『あの』
「?ナニ?」
『今の言葉、撤回して――って、何で持ち上げるの!?』

言葉が終わらないうちに、何故か私はわきの下に差を差し入れられて持ち上げられた。いとも簡単に持ち上げられすぎたため、ちょっとだけ反応が遅れる。
しかし、相手は私の言葉を聞かずにそのまま肩に担いだのである。

お伝えしましょう。私よりはるかに高い身長の彼に担がれるということは、いつもの倍、視線が上に行くということである。
なれないその高さに、私は勿論恐怖したのであった。

『…っ!!高い高い高い!!怖いっ!』
「女の子発見。マネージャー希望だっテ」
『なんでそんな話しになってるの!?そんなこと一言も言ってないし思ってもないんだけど!!』
「サー、コッチだよ!」
『私の話を聞いて!!』

すでに私の言葉を聞いていないお父さん。止めてください。マジで。
と、その時、したから再びドン、という音がした。
なんだと思っていると、お父さんが誰かに向かってはなしかけた。

「ダーメですヨ、ボクー。子供がコート入っちゃあ」

その前に、私を今すぐに下ろせ。

「……その肩に担いでいる人を放してくれませんか。ウチのマネージャーです」

……空耳でなければ、この声は確実にテツヤ君だ。でも、どうしてだろうか。私が記憶している声よりも数段低い。
まあ、はっきり言って、めちゃくちゃ怖いです。

そんな会話を、高い目線から聞いていると、相手校の選手の一人が慌てて止めに入ったけれど、あろうことか、お父さんは私を担いだまま、子供のいるようなチームには負けないとか言っていた。

テツヤ君の「うちのマネージャー」発言が効いたのか、するりと下ろしてもらえることになる。
唯一の救いは、特にその後に何も言われなかったことだ。
これが黄瀬君だったらもっとしつこ……けふん。これ以上は言わないでおこう。あんなのでも一応人気モデルらしいので彼のイメージダウンになるだろうし。
あ、でもこの場にいないから関係ないのか。

私の後ろでテツヤ君が苛立ちをあらわにし、試合開始のホイッスルが鳴り響くのはもうすぐだ。




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