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「名前は、「パパ・ンバイ・シキ」。身長200cm、体重87kg。セネガル人の留学生よ」

その言葉を理解すのに時間がかかった。
しかし、その大きさはリコ先輩の携帯でも分かるほどで。私が並んだらあれが出来る。
某漫画の進撃の○人。

「セネガ…でかぁ!!」
「アリなの!?」
「留学って……てゆーかゴメン。セネガルってどこ!?」

……あ、それ正直私も思いました……。

「このパパ・ンバイ…何だっけ?」
「パパ・ンバ……」

名前が少し特殊だから、どうにも覚えにくいらしい。
そのまま「パパ」でいいのではないだろうか。

「話が進まん!黒子君、なんかあだ名つけて」

リコ先輩の無茶振り感ハンパないです…。

「「お父さん」で」
『まんまだね!?』
「何そのセンス!?」
「だからこのお父さんを……聞けよ!!」

皆さん、テツヤ君のつけたあだ名でめっちゃ笑いこらえててリコ先輩の話に耳を傾けていられる状況ではないようです……。

「特長は背が高いだけじゃなくて手足も長い」
『なんかあれですね。高い、の一言はこの人のために存在するみたいな?』
「そのとおり。たった一人の外国人選手の加入で完全に別物のチームになってるわ。
届かない、ただそれだけで誰も彼を止められないのよ」

体育館内に、静寂が落ちる。
でも。

『……でも、だからってこのまま何もしないでいいんですか?それじゃあ、インターハイは完全に夢で終わってしまうんですよ?』

おもわずでてきた言葉に、私も皆もはっとする。
バスケのルールをあまり知らない私がこんなことを言ってしまっては皆が怒っても文句は言えない。ちょっと異心地が悪い。
そんなことを思っている、リコ先輩が私の肩に手を置いてくれた。

「結衣ちゃん。いい事いったわ。勿論、このまま何もしないわけがないわよ。…ってわけで」

そう言って、リコ先輩はテツヤ君と火神君の二人に振り向く。

「火神君と黒子君。二人は明日から別メニューよ。
予選本番は5月16日!!それまで弱音はいてる暇なんてないわよ!!」

その一言に、その場にいた人たち全員が声を出して気合を入れなおした。

――そして、5月16日。予選本番当日。

会場に到着する。そこには、すでに身体を慣らし始めている選手であろう高校生達が終結していた。
広い体育館にはバスケットボールを叩きつける音と、バスケットシューズのスキール音が響いていた。

『おおー!こういう公式戦って、私初めてです!』
「そうなの?じゃあ、楽しんでみるといいわよ」
『はい!』

マネージャーという慣れないことを未だに続けてはいるものの、試合は海常のあの練習試合と、学校でのミニゲームのみ。
こういった場に足を踏み入れたことは一度もない。
皆がすでに身体を慣らし始めている中で、私はわくわくしながら体育館内を見渡す。

そして、あるはずの人影がないことに気付く。

『そういえば、お父さんいませんね?』
「そういえば、そうね」

コート内でも同じことを思ったのか、日向先輩たちがお互いに顔を見合わせていることにづく。
ちょっと外に行ってみようかなと思って、てくてくと歩いていくと、目の前が何かに塞がれたのと同時にがん、という音がひびいた。



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