30





30


「GW明けたらすぐ予選かー、早っえーなー」
「あと三週間ぐらい?」

そんな部員の声を聞きながら、私は体育館の隅っこにちょこんと座っていた。いつになったらこのマネージャーというものから解放されるのだろうか。
甚だ疑問である。
勿論、私はマネージャーを辞めるということをあきらめてはいませんよ!
だって、バスケのルールとか殆ど知りませんからね!!

…一人でこんなこと思っているのが一番むなしいって最近気付きました……。

その時。

「だアホー、何言ってんだ」

と、気の抜けた日向先輩の声が聞えてきた。それと同時ぐらいに誰かが殴られるような音。
なんだ?と思ってそっちを見ると、日向先輩が真剣な表情で一年生に向かって話している。

「一度負けたら終わりのトーナメントだぞ。一回戦でも決勝でも、気を抜いていい試合なんてねーよ」

その一言で体育館の中の空気が変わったような気がした。
私には正直あまり関係ないのですが。
とそんなことを思っていると、トーナメント表を持ってきたという声が入り、日向先輩が皆にまわしてくれという指示が飛ぶ。
私も一応はマネージャーという立場にいる以上受け取らないわけにはいかない。
隅っこから立ち上がって、私はテツヤくんと火神君のそばによった。

「結衣さん、はい、どうぞ」
『ありがとう、テツヤ君』
「いえいえ」
『えっと…誠凛の名前は……』

なんでこうも漢字が多いんだろう。いや、当たり前だよ。高校名だもん。
……目が疲れてくるわー……。

くだらないことを考えていると、火神君がボソッと言った。

「「キセキの世代」がいる秀徳ってとことやるには…決勝か……」
『こんなにも参加高校があるんだね』
「まだ紙ありますよ、はい結衣さん」
『まだあるの!?』

――A〜Dまで4ブロックある。各ブロックの頂点一校のみが決勝リーグ進出。さらにその決勝リーグで上位3チームに入っては閉めてインターハイ出場。300校以上の出場校から選ばれるのは立った3校。1%の選ばれた高校生しか立てない夢の舞台、それが…インターハイ

『(……うわぁ、今の話しあんまりききたくなかったなぁ…)』

そもそも選ばれたって言う表現が少し違う気がする。
もっと的確に言うなら……。

「選ばれるんじゃなくて、勝ち取るんだろ…です」
『火神君、いいこといった!』
「うおっ!?なんだよ!?」
『そうだよ、選ばれるって言うよりもその表現のほうが正しいよね!だって、皆が必死に積み重ねてきた実力でもぎ取るものだもん。その積み重ねで手にしたものを偶然手にしたみたいな言い方は良くないですよ、日向先輩!』
「お、おう…悪い」

たまにはいい事言うじゃないですか、火神君!
そんなことを思っていると、リコ先輩が体育館に入ってきた。
そして、あまり機嫌がよろしくないような気がする。

「機嫌悪ーな。強いのか相手?」
『そういえば、視察にいってきてくださったんですよね?』
「まあね。とりあえず、ビデオは後で見せるとして、まず写メ見て」

そう言って、リコ先輩は私たちに向かってケータイを差し出した。
そして画面に映っていたのは……

『かっ、…!』
「かわいいが……」

愛らしいネコの画像だった。

「……ごめん、次」

言われて携帯を操作した日向先輩はその画像を見て愕然とした。一緒に覗き込んでいた私もあっけにとられたのは言うまでもなかった。



prev next

 

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -