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『そっか。でも、きっと黄瀬君は理解できる日がくると思うよ。あのチームメイトがいるならね』

そう言って、私は黄瀬君に笑ってみせた。少し意外そうに私のその顔を見て、黄瀬君の小さく微笑み返してくれた。
けれど、テツヤ君を見つめた瞬間のその表情は真剣そのものだった。

「けど、一つ言えるのは…黒子っちが火神を買う理由がバスケへの姿勢だとしたら……黒子っちと火神は…いつか…決別するっスよ」

その言葉に、私は、テツヤ君は、驚かなかった。
黄瀬君はそれでも言葉を続けた。

「オレと他の四人の決定的な違い…それは身体能力なんかじゃなく、誰にも…オレにも、マネできないセンスをそれぞれ持ってるってことっス。
今日の試合で分かったんス。火神はまだ発展途上…。そして「キセキの世代」と同じ…オンリーワンのセンスを秘めている。
今はまだ未完成な挑戦者っス。ただガムシャラにプレイして、強敵と戦うことを楽しんでいるだけのね。
けど、いつか必ず…「キセキの世代」と同格に成長してチームから浮いた存在になる。その時アイツは…今と変わらないでいられるんスかね?」

わあ、いやなことを言う。でもきっとそれは「キセキの世代」として戦った黄瀬君の本心なんだろうと容易に想像ができる。彼が楽しんでこういった冗談を言うタイプにはとても見えないし、第一、今はそんなことを冗談で言えるような空気でもない。
沈黙がその場を包んだ。

その時。

「テメーら、何ふらふら消えてんだよ!」

背後から大きな声で呼びかけられ身体が思ったよりも大げさに反応する。
テツヤ君なんか、思いっきり背中叩かれてめっちゃ痛そう……。

「…よう」
「…聞いてたんスか?」

一瞬にしてぴりぴりした空気出すの止めていただけませんかね?

「聞いてたかじゃねーよ。お前、何いきなり黒子と結衣拉致ってんの!?」
「は?ちょっとくらいいいじゃないっスか!」
「帰れねんだよ!!」

いきなり言い合いが始まった!
テツヤ君と顔を見合わせてちょっと困っていると、ストリートのほうからなにやら怒鳴り声が聞えて、私たちはそっちを向く。

明らかに柄が悪そうな人たちだな。高校生か?大人気ない。
あ、バスケで勝負することになったんだ。
…………3on3っぽいと思ったんだけど、明らかに柄の悪いのがルール破ってる。反論してる。
……!!殴った!?

我慢できなくて飛び出した。

『どう見ても卑怯よ!!』

体が勝手に動いたといってもいい。いや、むしろそう表現するしか出来ない。
自分よりもはるかの長身の男に見下ろされるのはなかなか迫力がありますね。
とりあえず、蹴られてた人のそばに屈んで様子を伺う。そこまで重症じゃなさそうだったことに安心した。

『あんなバスケはないわ』
「そうですね。それに、暴力は良くないです」
『本当よ。暴力を振るう必要がどこにあったのよ』
「強気な女だな。お前も一回、殴られとけよ!!」

足!!足が飛んできた!?てか避けられるはずないじゃんか!!
覚悟を決めて目をぎゅっと瞑ったけど、痛みは襲ってこない。その代わりに、バシッ!!と何かにあたったような音がした。
そっと目を開けてみると、目の前には金髪の美青年が立っていた。

『黄瀬君…』
「女の子に手を上げるのは感心しないっスね。結衣っち、大丈夫?」
『あ、うん。平気』

そう返事したら、彼は本当に安心したみたいに表情をほころばせた。

「しょうがねーなー。じゃあ、バスケで勝負してやるよ」

そういって、こっちを見たときには火神君もそばに来て、テツヤ君の頭を掴んでいた。………掌大きいな。

「あ、それならオレも混ざるっスよ」
「5対3でいいぜ」



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