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そんな時、遠くから大声で叫びながらこちらに来る人影を認識した。

「テメー、渋滞で捕まったら一人で先に行きやがって…。なんか超ハズかしかっただろー!!」

…それはそうだ。リアカー引っ付けて走っている自転車なんて注目の的でしょう。
とか思っていると、緑間君はくるりと向きをリアカーのほうに向けた。

私と黄瀬君に向かって言葉を投げてくる。

「まあ今日は試合を見に来ただけだ。…だが、先に謝っておくよ。秀徳高校(オレたち)が誠凛に負けるという運命はありえない。残念だが、リベンジは諦めたほうがいい」
「…………」
『…………』

そう言って、緑間君は渡した老舗を向けて帰っていった。

ところで。
彼は試合を見て痛んだと思う。確実に。黄瀬君に向かって〈リベンジ〉という言葉を投げかけたのだから。
見ていなかったらエスパーですかってなるわ。
いや、そうじゃなくて。

『……ねえ、黄瀬君』
「?はい?」
『緑間君は、私が誠凛の人間だってわかった上でああいっているんだよね?』
「……たぶん」
『ですよね?ああ、私ってバカにされてたりするの?そうなのかな?試験でもあいつに負けないと思うんだけど、どう思いますか、黄瀬さん』
「結衣っち怖いっスよ……」
『あんなにも!堂々と!バカにされて!!だまってなんていられないよー!!』

久々に、結構大声で叫べた気がする


それから、海常の後者と完全におさらばし(黄瀬君にはひたすら縫いとめられたけれど、笠松先輩が助けてくれた)、誠凛の民など合流する。
合流して早々、後悔した。

「帰りどっかで食べてこうぜ!!」
「何する?」
「安いもんで、オレ金ねー」
「オレも」
「ボクも」
「…ちょいマテ。今、全員の所持金、交通費抜いていくら?」

皆がごそごそと細部の中身を確認する。
私は普通に三千円とか入っている。特に金欠な訳ではない。
が。

掌に残っていたお金の金額は――21円。
どんまいすぎて何もいえなかった。
さすがにぶいん全員にお金を貸すのは私には出来ないし、帰ろうという話になったのだが。リコ先輩が何かを見つけた。
そして。

「大丈夫!むしろガッツリいこーか!肉!!」
「……?」

当たり前のことに、私たちは頭に疑問符を浮かべるばかりだった。

男性部員の目の前にはモノすっごく大きな肉の塊。
私のそばにはってあるポスターには、

〈超ボリュ――ム!!
4kgスーパー盛盛ステーキ!
30分以内に食べられたら無料
※失敗したら全額負担、一万円也〉

と書いてあったりした。
目の前に置かれている男子部員の皆は明らかにテンションが低い。
それはもちろん、食べられなかったら全額負担の一万円がかかっているからだろう。

しかし、リコ先輩はにこやかに笑っていた。

「遠慮せずいっちゃって!」
「ガッツリいき過ぎじゃねぇ!!?」

物凄い突っ込み!正確すぎる!だから笑える!

「え…ちょ、マジ…?これ食えなかったらどーすんの!?」
「え?ちょっと〜〜…何のために毎日走りこみしてると思ってんの!?」
『リコ先輩…決して食い逃げするためではないかと……』
「ん?大丈夫よ、皆ならやってくれるって信じてるわ、特にキャプテンである日向君!」
「オレ!?」
「もちろんよ!ちゃーんと、食べてくれるんでしょ?くれなかったら責任全てキャプテンになるわけだし、プラスで日向君が大事にしているものが一個ずつなくなっていくだけだから」

語尾に、絶対にハートがついた。ついたよ、今!


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