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みんなの内心は、きっと同じだったと思う。特に、黄瀬君とずっと張り合っている火神君なんて、特に。
――ここにきて、まだこの人は強くなるのか、と。
「やべえな…全員気ぃ入れろ。こっから試合終了まで、第1Qと同じ…」
『――点の取り合い…!!』
コート内をめまぐるしく移動して、ボールを味方にまわし、その中でカットする人もいれば、される人もいて。ゴール下でリバウンドを取る人もいれば、それを奪われる人もいる。
まさに、言葉通りの〈点の取り合い〉であり、皆練習試合だというのに、とても死に物狂いで。
ハイスピードで繰り広げられるその試合に目を奪われない人は、この場にはいなかったと思う。
特に、火神君とテツヤくん、黄瀬君の三人は、皆根本的に負けず嫌いだから見ているこっちにまでひしひしと伝わるほどの気迫だった。
「うわああまた同点!?」
「っの…!!しぶとい…!!トドメさすぞ!!」
『(……残り…十五秒……)』
胸中で、残りの秒数を思わず数えてしまう。
皆が負けるとは思っていないけれど、点差はない。98対98の同点。
「時間がねぇぞ!!当たれ!!ここでボール獲れなきゃ終わりだ!!」
「おお!!」
怒号が響いて、その場の緊張感が一気に増す。
『(……みんな…!!)』
「(残り10秒切った…もうウチに延長戦を戦う体力はない―――!!)守るんじゃだめ!!」
『攻めて!!!』
精一杯声を張り上げて皆に伝える。
日向先輩がボールをとろうとしたけれど。
足が上がっていなかった。
『日向先輩……っ!!』
その間に、笠松先輩がすでにモーションを終えてシュートをしようとしている。
「しまっ…」
笠松先輩の手から、ボールが離れた。
けれど、横からすかさず火神君がカットをする。
「なっ…」
落とされたボールを、日向先輩が拾う。
そして、速攻。
「うわぁあ獲った!!」
「マジかよ!?」
けれど、自陣のゴール下にはすでに黄瀬君が立っている。
見詰め合う、三つの視線。
緊張感が高まっているのが分かる。
「黒子!!」
火神君がテツヤ君にパスを回した。
もちろん、黄瀬君はそれに驚いた表情をしている。
テツヤ君はシュートが上手なわけではない。だから、この局面で、シュートを打つことはほぼありえない。
火神君とツーメンならなおさら。火神君のほうが確実にゴールに入れられるわけだから、普通に考えたら、テツヤ君は火神君にボールをリターンするしかない。
けれど、テツヤくんはボールをゴールに向かって投げた。
それに驚いた黄瀬君はもちろん反応に遅れる。
「…パスミス!?」
全員がそう思ったと思う。
時間は、あと一秒。
その時、笠松先輩が気付いた。
「……じゃねえ!!アウリープだ!!」
ジャンプしている火神君がいる。
ゴールに入れさせないように、続いてジャンプした黄瀬君がいる。
けれど。
「!?」
黄瀬君のほうが後に飛んだはずなのに、彼のほうが早くおちていっている。
「テメーのお返しはもういんねーよ!!なぜなら……」
がっと、大きな音がしたと同時に、試合終了の大きな合図が鳴った。
「これで終わりだからな!!!」
驚きに見開かれた金の眸を、わたしは見た。
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