20




20

「血が……!!」
「大丈夫か黒子!?」
「……ふらふらします」
『私に掴まって!』
「救急箱持ってきて!」
「おい…大丈夫かよ!?」
『火神君…』
「結衣さん、火神君……。大丈夫です。まだまだ試合はこれから…でしょう…」

言いながら、テツヤくんは私にもたれかかる。

『全然大丈夫じゃないじゃない!?でも、火神君ヘルプ!私、テツヤくん支えられない!!』
「あ!?マジか!?ちょっ、倒れんなよ!!」

そういいながら、火神君は力強い腕で私とテツヤくんを支えてくれた。心強いです…!

「…どうする」
『…テツヤくんを出そうとは…しないで下さい。するのなら、今からあっちの監督のところに行って、向こうの不戦勝にしてもらいます』
「いえ、大丈夫よ、結衣ちゃん。黒子君はもう出さないわ、残りのメンバーでやれることをやりましょ!」
『…リコ先輩…すみません……』
「結衣ちゃんが謝ることじゃないわ。OFは二年生主体でいこう!まだ第2Qだけど、離されるわけにはいかないわ。早いけど【勝負所】よ、日向君!
黄瀬くんに返されるから火神君はOF禁止!DFに専念して全神経注いで黄瀬くんの得点を少しでも抑えて!」
「そんな…ソレで大丈夫なんで…すか!?」
「大丈夫だって、ちっとは信じろ!」
「でも……」

話し合いのさなかに私は入り込まず、テツヤくんの治療を続ける。
その時。

「大丈夫だっつってんだろダアホ!たまには先輩の言うことちゃんと聞けや殺すぞ!」
『……?……!?…………!?』

いま、誰が何を言ったのか私理解できなかった!

「ったく今時の一年はどいつもこいつも……もっと敬え!センパイを!そしてひれふせ!」
「スイッチは言って本音漏れてるよ、主将!」

……聞きたくなかったそんな本音…!!私も生意気なこと言ったからかな!?ちょっと心配になってきましたよ、日向センパイ様!!
コート上では、火神君が私みたいに固まってる。
その時、後ろから伊月先輩が声をかけた。

「あー、気にすんな。クラッチタイムはあーなんの。とりあえず本音でてる間はシュート早々落さないから。OFはまかせてお前はDF死に物狂いでいけ」

…クラッチタイム……。

私の隣ではリコ先輩が少し生き生きとしていた。

「あいにくウチは一人残らず……諦め悪いのよ!」

そうなんですか……。

「優しいときは並みの人!!スイッチはいると凄い!!けど怖い!!二重人格クラッチシューター日向順平!!」

その時、先ほど日向先輩が放ったボールがゴールに吸い込まれて点が加点される。

「ざまぁ〜」

「冷静沈着慌てません!!クールな司令塔!かと思いきやまさかのダジャレ好き!伊月俊!!」
「サロンパスで…ナイスパス。やべぇ、きたコレ」

……聞きたくなかった、そのダジャレ……。

「仕事キッチリ縁の下の力持ち!でも誰も声聞いたことがない!水戸部凛之介!!」
「……」

確かに……声聞いたことないかも……。

「なんでもできるけどなんにもできない!Mr.器用貧乏!小金井慎二!!」
「ひでぇ…」

なんで…小金井先輩の紹介だけそんな適当なんだろう……。

それからの展開はよくもなく悪くもない感じだった。
皆凄くがんばっている。けど、それでも人間だから疲れももちろん出るし、ずっと集中してはいられない。
点差は開かないけれど、それに食らいつくのがいっぱいだから追い越せるわけでもない。

ベンチでも、ただ見ているだけの人間なのにその展開をどうにかしたいと考えてしまう。

「カントク…何か手はないんですか?」
「…前半のハイペースで策とか仕掛けるような体力残ってないのよ。せめて、黒子くんがいてくれたら…」

その時、私は黒子君の手がピクリと動いたのが分かった。

「…分かりました」
『テツヤくん!?』

むくりと起き上がる彼をとがめるような声を思わず上げてしまう。

「おはようございます。…じゃ、行ってきます」



prev next

 

「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -