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キュッと、バッシュのスキール音が鳴り響く。
黄瀬君とテツヤくんが向かい合った。

「黄瀬についてんのって…えーっと…」
「何かすげぇパスしてたような…？」
「え、ウソ!?見てね〜」
「てゆーか…」
「相手に……なるわけねぇ―――――!!」

そうですよね。うん。でも、あなたたちが思っていることと、私たちが考えていることはまったく違うの。
だからこその配置なんだよ。

「……まさか、夢にも思わなかったっスわ。黒子っちとこんな風に向き合うなんて」
「……ボクもです」

周りが、しんとする。
黄瀬君がボールを持ったまま、少しだけ止まる。

「一体……どーゆーつもりか知んないスけど…黒子っちにオレを止めるのはムリっスよ!! 」

黄瀬君が叫びながらテツヤくんを抜いた。
スキール音がする。バスケットボールをつく音がする。

けど、黄瀬君が行った先には火神君が待っている。足止めをさせる。

「違うね。【止める】んじゃなくて」
「【獲る】のよ！」

リコ先輩が私の隣でそう言った瞬間に、テツヤくんが黄瀬君からボールを後ろからカットした。

「なっ!!?」

黄瀬くんも、一瞬何をされたのか分からない表情をしている。ソレもそうだと思う。
テツヤくんがDFについた時点で周りが思っていたとおり、相手にもならない。けど、ソレが違う目的であるならば。
ソレは絶大な効果になる。

「お前がどんなすげえ技返してこようが関係ねぇ。抜かせるのが目的なんだからな」
「そのんなの、抜かなきゃいいだけじゃないスか。誰も言ってないスよ。外がないなんて」

知ってる。実力が全てのスポーツ界で、ただ一つのことに執着することは、ただの弱い選手だって。
でも。
あなたの考えていることは、こちらだって考えていることだと、思って。

火神君がジャンプして黄瀬君のスリーを防ぐ。
つまり、平面はテツヤくんが、高さは火神君がカバーする。
外からうつシュートはモーションがかかるから、止めることは予測さえ出来れば、出来ることでもある。
そもそも、今のこの流れを作ってくれているのはテツヤくん。コート上では最弱と思われているその存在感は、確かに存在している！

「いくぞ！速攻！」

火神君が声をかけ、ボールを投げる。
その時。黄瀬君がDFに駆けつけようと振り返り、走り出そうとした瞬間。
テツヤくんのカゲの薄さが、災いした。

『テツヤくん!!』

がっと、黄瀬君の肘がテツヤくんの頭に直撃した。

「レフェリータイム!!」

審判の声が響く。

『テツヤくん!!』

思わず私はコート内に入ってしまう。テツヤくんは血を流していた。

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