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「…ふぅ…ったく…しんどいね…つくづく」
そして、それが引き金になったかのように、テツヤくんもどんどんパスをカットされるようになってきた。
「……なるほど、少しずつ慣れてきたかも…」
じりじりと、点差が開いていく。
そして、火神君は黄瀬君にずっとシュートをカットされ続けている。
「アウト・オブバウンズ!!白ボール!!」
ぴっと、笛の音が響いた。
「…そろそろ認めたらどっスか?今のキミじゃ「キセキの世代」に挑むとか10年早えっスわ」
「なんだと……!?」
「この試合、もう点差が開くことはあっても縮まることはないっスよ。チームとしての陣形や戦略以前に、まずバスケは「体格のスポーツ」。誠凛と海常じゃ5人の基本性能が違いすぎる。
唯一対抗できる可能性があったのはキミっスけど、だいたい実力は分かったっス。
潜在能力は認める。けどオレには及ばない。キミがどんな技をやろうと【見れば】オレはすぐ倍返しできる。
どう足掻いてもオレには勝てねぇスよ。ま…現実は甘くないってことスよ」
黄瀬君が、火神君に何かを言っている。
けど、次の瞬間、火神君の笑い声が体育館に木霊した。
皆が、ぽかんとした表情で火神君を見つめる。もちろん、私も。
原作読んでても、あまり細かいことは覚えていないのが私の記憶力。
はははー、何故だ。何故私がここにいる!!
「ワリーワリー、ちょっと嬉しくてさァ…。そーゆーこと言ってくれる奴久しぶりだったから」
「……!?」
「アメリカじゃそれが普通だったんだけどな」
「え!?アメリカいたの!?」
「日本帰ってバスケから離れたのは早とちりだったわ。ハリ出るぜ、マジで。やっぱ人生チャレンジしてナンボじゃん。
強ぇ奴がいねーと生きがいになんねーだろうが。勝てねェぐらいがちょうどいい。まだまだ!これからだろ!聞いてねぇゴタク並べんのは早―んじゃねーの?
…おかげで分かったぜ、お前の弱点」
「!?」
「自分から言い出しづらかっちょっと分かるわ」
そんなことを言いながら、火神君は突然きょろきょろと辺りを見回す。そして、目当てのもの――テツヤくんを引っつかんだ。
「見えれば出来る?見えなかったら?そもそももとからウスいのが前提じゃやれって方がムリな話しだろ。いくら身体能力が優れているオマエでもカゲを極限までウスめるバスケスイタルだけは出来ない。…つまり、コイツだろ!お前の弱点!」
そう言って、火神君は満足そうに黄瀬君に挑むように笑いかけながら、テツヤくんの頭を上から押さえるようにしてぐしゃりとした。
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