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「弱点…!?」
『……え、私、ここで聞いていたくないんだけど』
「そんな冷たいこと言わないで」
『仲間の弱点を楽しく聴けると思うの?』
「……キミ、ちょいちょいオレに冷たいっスね」
『そうだね、黄瀬君』
「否定しないんだ?」
『飾られることが嫌いなら、飾らないでいるよ。そうだよ、私、あなたみたいな人苦手』
「ま、それでも手放す気なんてこれっぽっちもないケド」

……結局、私は捕まったままです。ええ、そうですとも。逃げられないんですよ!

「話し戻しますね。彼のミスディレクションは40分フルには発動できないんス」
「ミスディ…何!?」
「11番のカゲの薄さは別に魔法とか使っているわけではなくて…ザックリ言えば他に気を逸らしているだけ。一瞬ならオレでも出来ます」

そう言って、黄瀬君はそばにあったボールを近くの人にとってもらって、自分の手に持つ。

「【オレを】見て下さい」

笠松先輩にそういった後、黄瀬君はボールを上に放り投げる。すると、笠松先輩の視線が黄瀬君に向いていたはずなのに、気がそれてボールを見る。

「ほら、もう見てない」
「あ!」
「黒子っちは並外れた観察眼でこれと同じ事を連続で行って、消えたと錯覚するほど自分を薄めてパスの中継役になっているんスよ。まあ、やんなくても元からカゲはウスいんスけど……。
けど、使いすぎれば慣れられて効果はどんどん薄まっていくんス」

その時、真正面からリコ先輩の叫び声が聞こえた。

「そーゆー大事なことは最初に言わんか―――!!」
「―――――」
「聞かななんもしゃべらんのかおのれは―――!!」

……リコ先輩……。
テツヤくんが何かを言っているとは思ったけど、何を言っているのかまでは分からなかった。けど、リコ先輩の言葉的に、多分聞かれなかったからとか答えたんだろう。
ああ、結構損な役回りですよね。

そんな時、TO終了の掛け声がかかった。

「黒子君シバいて終わっちゃった―――!!」

悲壮な声ですね、リコ先輩……。

でも、TOが終わったということは、私も解放されますとも!!
全力で誠凛のベンチに逃げ帰ったのは言うまでもない。

―side 海常 end――

『……汗臭かった……』

これが、今をときめくイケメンモデルに抱き締められた私の感想である。

「お、中固めてきた」

ざわりとざわめきが広がった。

「…………やんなるぜ、まったく」

笠松先輩の呟きが、何故か聞こえてきた。

その瞬間、笠松先輩はその場で思い切り跳ね上がり、ボールをゴールに向かって投げる。

「おお、一蹴の3P!!」
「海常レギュラーナメてんのか?ヌリぃにも程があるぜ」

とても、馬鹿にしたような表情。でも、おそらく笠松先輩がそういった表情をしたのは誠凛側が黄瀬くんにだけ重点を置いたからだろう。
それが、笠松先輩達を逆に怒らせるものとなったのだ。

納得が出来てしまうから、なんだか申し訳なくなってしまう。
脅威は、黄瀬だけではないと見せ付けたのが、笠松先輩の3Pなのだから。



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