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……これは、素人の私が見てもおかしいと思う。
だって、このペースは始まったばかりのときに出すものではない。
もっと、第3とか第4ゲームのときとかにあるものではないだろうか。

時計を見ても、1ゲーム10分のはず。記憶では。でも、進んでいる時間は、まだたったの三分。どう考えてもおかしい。

こんなのは……。

『リコ先輩……』
「……ええ、分かってるわ結衣ちゃん。こんなのは、ノーガードで殴り合っているようなものよ。DFは当然、全力でやってる。ただ、それよりお互いの矛が強すぎる…!!」
『これが……「キセキの世代」同士の、衝突……』

コート内にいる先輩達だって、いっぱいいっぱいで戦っている。それでも、相手の圧力も半端ない。
この均衡が、いつまで保つのかも分からない。

その時、コート上で火神君が技を使った。

「後ろに、フェイダウェイ!?」

しかし、それを止めるのはイケメンさん。
そして、自分達のゴールに先ほど火神君がやって失敗した【フェイダウェイ】を実行し、成功させる。

『リコ先輩。今のままは、なんかいけない気がします。なんていうか、一回火神君を落ち着かせないといけないって言うか……』
「(……この子は、バスケ初心者で何も分からないはずなのに、どうしてこんなにも的確なタイミングで……)ええ、分かっているわ。一度TOとりましょう」

そう私に返して、リコ先輩はTOをとりに言った。体育館中に声が響く。

「誠凛TOです」

私は、リコ先輩がTOをとりに言っている間に、選手として出ている五人分のドリンクと少し多めにタオルを用意する。
ベンチに戻ってきた皆は、五分ではありえないほどの疲れを見せていた。
ふとしたときに、海常のベンチ側でイケメンさんが私を見つめているのに気付く。

何かあるんだろうかと思い、首を傾げて答えてみると、ちょいちょいと呼ばれた。
え、私そっちに行っていいの?一応敵なのに、と表情で訴えると、にかっと笑われた。
これは…大丈夫って事なのか?

『リコ先輩、私、ちょっとあっちのベンチ行ってきますね。なんか、イケメンさんが呼んでるんで』
「え!?ちょっと結衣ちゃん!?」

私は、そのまま海常のベンチに向かって、出来るだけ人目につかないように向かった。



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