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「おお〜広〜〜、やっぱ運動部に力入れてるトコは違うねー」
さすが日向先輩。言うことが大人!
……って言うセリフじゃないですけど、言わせて。
何度も言おう。私に心の平穏を!そして、私をこの世界に飛ばした意味を!説明プリーズ!
てか、キセキの世代に関わりたくないんですけど。このままいったら完全にキセキの世代に関わってしまうじゃないですか?なんで?え、なんで?
私別に望んできたわけではないはずなのですが……。というか、きっとこの【黒子のバスケ】のファン、もっとたくさんいましたから。なぜ私を選んだ。
こんな友達からちょっと借りて楽しかった〜、とか言って満足しているような人間じゃなくてもよかったのでは?
もっと熱が入ってる子を送ってきてあげなよ!
ほら、二次元の彼氏いることか!喜ぶと思うよっ!?
「火神くんいつにも増して目つき悪いです」
「るせー、ちょっとテンション上がりすぎて寝れなかっただけだ」
…以外と子供だね、火神くん。
「どもっス。今日は皆さんよろしくっス」
「黄瀬…!!」
「広いんでお迎えにあがりました」
片手を上げて笑顔でイケメンさんがこちらに来ていた。
「黒子っち〜あんなアッサリフるから…結衣ちゃんも〜…。毎晩枕を濡らしてんスよ、も〜〜」
『…そうですか』
「冷たっ!女の子に振られたことなかったのに〜……」
「…サラッとイヤミ言うのやめてもらえますか」
『そのまま不幸のどん底に落ちればいいと思う』
「ちょっ!結衣ちゃんオレに冷たくね!?」
『気のせい気のせい。ええ、それはもう気のせいです。被害妄想やめてください』
「(いや…俺らから見ても気のせいって思えねぇよ……)」
みんながそんなことを思っているとはいざ知らず。
「まあいいや。けど、だからこそ黒子っちにあそこまで言わせるキミには…ちょっと興味あるんス。「キセキの世代」なんて呼び名に別にこだわりとかはないスけど…。
オレもそこまで人間できてないんで…悪いけど本気でツブすっスよ」
「ったりめーだ!」
やる気満々だね、火神くん!
でも私は帰りたいよ!
そしてしばらく歩いていると目的地に着いたらしい。
「あ、ここっス」
『…って』
「え?」
目の前に広がるのは、片面のコート。もう片面では、いつもと変わらない感じの練習風景。
「…………片面…でやるの?」
リコ先輩の気の抜けたような声が誠凛のみんなの心の声だった。
「もう片面は練習中…?」
「てかコッチ側のゴールら年季入ってんな…」
みんなが思っていることをぽつぽつと言葉にする。
「ああ来たか。よろしく。今日はこっちだけでやってもらえるかな」
おおう、メタボさんきた。
それと、リコ先輩、顔ひきつってますから。
「こちらこそよろしくお願いします。…で、あの…これは…?」
リコ先輩が気を使ってる!
「見たままだよ。今日の試合ウチは軽い調整のつもりだが…出ない部員に見学させるには学ぶものがなさすぎてね。無駄をなくすため他の部員達には普段通り練習してもらってるよ。
だが、調整と言ってもウチのレギュラーのだ。トリプルスコアなどにならないように頼むよ」
……ああ、人間の醜いところだ。思いあがっている。
じぶんの強さを信じて疑わない。だからこそ、人を見下すことができる。
日向先輩たちも、テツヤくんも、火神くんも。リコ先輩も。みんなイラついているのがわかる。
そうだよね。だって、要約すれば「練習の片手間に相手してやる」ってことだもんね。
「…ん?何ユニフォーム着とるんだ?黄瀬、オマエ出さんぞ!」
「え?」
「各中学のエース級がゴロゴロいるウチの中でもお前は格が違うんだ」
……また「キセキの世代」か……。
「黄瀬抜きのレギュラー相手も務まらんかもしれんのに…出したら試合にもならなくなってしまうよ」
……ああ、醜い。
……吐き気がするほどに、醜い。
「大丈夫、ベンチにはオレ入ってるから!」
そんなに必死にならなくてもいいのに。
私は、もう何の興味もない。
「結衣ちゃーん!」
『……』
「あれ、反応ない……ま、いいや。あの人ギャフンと言わせてくれれば多分オレ出してもらえるし!オレがワガママ言ってもいいスけと…」
次の瞬間。
彼は。
私が一番嫌いな表情をした。
「オレを引きずり出すこともできないようじゃ…「キセキの世代」倒すとか言う資格もないしね」
ああ、本当に、人間ってなんでこんなにも見にくくなるんだろう…。
『本当に、嫌いだなぁ……』
「…え?」
『あ、ううん。なんでもないよ、テツヤくん』
「……結衣さん?」
そのままテツヤくんの言葉を無視する。
「アップはしといてください。出番待つとかないんで…」
「あの…スイマセン。調整とかそーゆーのはちょっとムリかと…」
『そんなヨユーはすぐなくなると思いますよ』
イヤミを込めて、セリフを奪ってまでいう私もなかなか性格は悪い。
挑むような視線を流しているイケメンさんを横目に、練習試合が始まった。
「…や、あの…だから始めんるで…誠凛、早く5人整列してください」
「あの…います5人」
「…おおぇ!!?」
ああ、驚いている。最初からあの位置にいるのに、なぜみんな気づかないのか。
それがわからない。
見ようとしてないから見えないのか。もうわからないけど。
「うおっ…なんだアイツ!?」
「薄っいな〜カゲ…」
「あんなんがスタメン…!?」
聞こえてくる声は信じられないという声。
相手のスタメンも、同じように驚いている。そして、バスケが本当にできるのかという、疑いの目。
「………………」
「どうしたんスかカントク…?」
あ、リコ先輩が呆然としてる。たぶん、それだけ相手の力量がはっきりとしてしまっているんだろう。
んー…私にはそういった特別な能力的なものはないから全くわからんけど、みんな腕の筋肉とかはすごいと思う。
いや。ほんと。一回触りに行きたいもん。
すみません。筋肉結構好きです。
あ。ボールが上がった。
開始だ。
最初にボールを取ったのは海常。
「んじ。まず一本!キッチリいくぞ!」
……さすが。幻のシックスマン。
すごいスピードでボールを奪いましたね。
「なっ…(どっから湧きやがったコイツー!!?)にぃ〜〜〜〜〜〜!!?」
うん、すごいテツヤくん!
でも…。
足遅いですね…。いや。多分私よりは早いと思うよ?そう見えるのは海常の人が早いからなのかな?
おお!
火神くんのダンク!かっこいい!
でも、今あんまりいい音しなかったよ?
バキャっていったよ?
たん、と地面に戻ってきた火神くんよ手には。
「お?」
見事にバスケットゴールが握られていた。
「おお?」
「おおおぇぇ〜!?」
「ゴールぶこわしやがったぁ!!?」
「あっぶね。ボルト一本サビてるよ…」
「それでもフツーねぇよ!!」
みんなの呆然としたような、それでも愕然とした表情が結構楽しい。
「どーする黒子、コレ」
「どーするって…まずは謝ってそれから…。
すみません、ゴール壊れてしまったんで全面側のコート使わせてもらえませんか」
そういったテツヤくんの表情は結構すっきりとしていたと、私は思う。
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