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5分後。

結局、私は帰ることは許されず体育館に残ることになった。なぜ、私はまだここにいるのでしょう。だって、先輩が帰ることを許してくれなかったんだもん。
これは、これは誰かの影に隠れているしかないですよね。
もちろん、隠れますとも。隠れさせていただきますとも!
なので、へんなオプションつけてくれないでくださいませよ、神様っ!

そう思った私は、こそこそとテツヤくんの陰に隠れた。

「…なっ、なんでここに!?」
「いやー、次の相手誠凛って聞いて、黒子っちが入ったの思い出したんで挨拶に来たんスよ。中学の時一番仲良かったしね!」
「フツーでしたけど」
「ヒドッ!!!」

テツヤくんの後ろに隠れたのはダメだったよね。だって、テツヤくんだってあの帝光出身なんだし、そもそも、テツヤくんは黄瀬くんなるものと仲が良かった気がする…原作ガッツリ読んでるわけではなかったからわからんけど…。
てか、はやくテツヤくんから離れたくれませんかね。私あなたと関わり合いになりたいとか思ってませんし。ミーハーじゃないし。

「中二から!?」
『……え、黄瀬くんなるのもは厨二なの?』
「……結衣さん……、違います」

あ、冷静に突っ込まれた。

「いやあの……大げさなんスよ、その記事、ホント。「キセキの世代」なんて呼ばれるのは嬉しいけど、つまり、その中でオレは一番の下っぱってだけスわ〜。だから、黒子っちとオレはよくいびられてたよ」
「ボクは別になかったです」
「あれ!?オレだけ!?……っていうか、黒子っちの陰に隠れてるキミ!さっき声かけたのに無視した子だよね!?」
『え、気のせいじゃないですか?』
「いや、その声は間違いないっスよ!」
『声で判断しないでくださいっ!なんか気持ち悪いっ!』
「きもちわる……っ!?」
『全国女子のみんなはこんな人のどこがいいの!?この人、ストーカーになれる資質があるっぽいんだけど!』
「ちょっ!?キミオレのイメージを底辺に落とさないで!というか、いつまで黒子っちの陰に隠れてるんスか!」
『いや、私の顔を見たら目がつぶれます。というか、黄瀬さん?に私の顔を覚えて欲しくない』
「そこまでっ!?」

ええ、そこまでですとも!
どう考えても、あなたは私の平穏を壊しますから!
とか思ってたら、黄瀬さんに向かってバスケットボールが思いっきり投げられた。
いま、バチィッ、て言ったよ。痛くないの!?

「っと!?った〜、ちょ…何!?」

……おお、ナイスキャッチ、黄瀬さん。本当に痛そうだけど。

「せっかくの再会中ワリーな。けど、せっかく来てアイサツだけもねーだろ。ちょっと相手してくれよ、イケメン君」

ナイスネーミングセンス!わたしもこれから彼のことはイケメンさんと呼ぼう。

「火神!?」
「火神君!!」
「え〜そんな急に言われても…、あーでもキミさっき……」

考え込んでいる。その間に私は逃げる。
ええ、逃げますとも!

「よし、やろっか!いいもん【見せてくれたお礼】。それと、そこのキミは逃げないでちゃんとオレのこと見てて」
『なぜ私がイケメンさんを見ていなければならないのでしょう!?』
「まあまあ、いいからいいから。てか、イケメンさんって何?面白いけど」

あぁぁ、私の平和を返してください。

「……っもう!」
「マズいかもしれません」
「え?」

……あれ?あのプレーって、ついさっき火神君がしてなかった?

「…なっ!?」
「彼は見たプレイを一瞬で自分のものにする」

がんっ、と大きな音が鳴る。私も、呆然と見ているしかできなかった。
火神君が尻餅をつく。イケメンさんが、綺麗に立った。

「これが…「キセキの世代」…黒子、お前の友達スゴすぎねぇ!?」
「……あんな人知りません」
「へ?」
「正直さっきまで、ボクも甘いこと考えてました。でも…数ヶ月会ってないないだけなのに…彼は…」

うんうん、バスケ素人の私もわかるよ。
とか思ってたら。

「見ててくれたんスか〜!?どうどう?オレ、カッコよかったでしょ!」
『きゃぁぁぁ!!』

なぜ私にくっついてるの!?
やめてよ、私の平和を壊さないで!!

「というか、名前なんていうの?オレまだ教えてもらってないッスよね?」
『でしょうね!私あなたに名前伝えてないですもん!』
「教えてくれるまで離さないでおこうかなー?」
『いじめ!!新手のいじめ!!テツヤくん、ヘルプ!』
「……黒子っちとは仲いいんだ?」
『イケメンさん、なんか怖いです……よ?』
「ん〜?オレのことは涼太って呼んでよ」
『何ででしょう!?私たち初対面ですよね!?』
「カンケーないカンケーない!」
『ありますっ!すっごい関係ありますからっ!』
「それより……ん〜これは…ちょっとな〜」
『え、私の言葉無視ですか!?イケメンさん!?』
「こんな拍子抜けじゃやっぱ…挨拶だけじゃ帰れないスわ」

このやろう、完全に私の言葉を無視してやがりますわね。
というか、私の言葉無視してるなら私を離してくれませんかね?くれませんかね?あなたの腕の中は怖いんですって。
これを、ファンの子が見たらどうなると思ってるんですか。私処刑ですよ処刑。死罪ですよ死罪。斬首です斬首!

さあ、わかったら私を開放してください!

「やっぱ黒子っちください」
『えっ』
「海常おいでよ、また一緒にバスケやろう」

まさかの引き抜き宣言にバスケ部みんながざわめく。
私も驚きでイケメンさんの腕の中で小さく呟いた。

「マジな話黒子っちのことは尊敬してるんスよ、こんなところじゃ宝の持ち腐れだって」
『あ、わっ!』

イケメンさん、私があなたの腕の中にまだいるのを忘れてるんですか?
というか、そろそろ本当に離しましょうよ。
そんなグイグイ行かないで!

「そんな風に言ってもらえるには光栄です」
『…テツヤくん……』
「丁重にお断りさせていただきます」
「文脈おかしくねえ!?」

……そうですね、今のは文脈おかしいですね。

「そもそもらしくねっスよ!勝つことが全てだったじゃん。なんでもっと強いとこ行かないの?」

……必死ですね、イケメンさん。でも、どうしてそんなに必死になってるのか、私にはわかりません。

「あの時から考えが変わったんです。何より、火神くんと約束しました。キミ達を…「キセキの世代」を倒すと」

テツヤくんの堂々とした言葉は正直かっこいいと思いました。
……それよりもね。苦しい。苦しいから!

「……やっぱらしくねースよ。そんな冗談言うなんて」

それよりもね、君は私を解放しよう!苦しいですから!

「そうでしょうね、いろいろありましたから。それより、黄瀬くん。そろそろ結衣さんを離してください」
「結衣?」
「黄瀬くんがさっきから抱きしめてはなさい彼女です」
「へー、結衣って言うんだ?」
『え?何かの気のせいです。ええ、気のせいですとも!』
「へー?」
『あ、う……』
「黄瀬くん。結衣さんを離してください」
「……黒子っちがオレの話に頷いてくれないなら、結衣ちゃんを海常にもらうっスよ?」
『………………………は?』
「……え?」

何を言われたのでしょう。はい、今一瞬で理解できた人挙手ー、しーん。
ですよねー、いないですよねー。普通いないですよねー。

というか。

『テツヤくんは誠凛に必要な人なんだから、私が海常に行くよ?」
「……随分あっさり決めてくれちゃいましたね?」
『え?だって私選手とかじゃないですし。私が行けば解決されるなら行けばいいだけですし!』
「……結衣さん。海常高校に行っても、多分マネージャーの仕事からは逃げられないですよ」
『え!?じゃあ行かないよ!』
「どっち!?」

あわよくばこれでマネージャー業から解放されるとか思ってすみませんでした。解放されないんだったら、誠凛に居続けますとも!
というか、このオプション本当にいらないし!
なんでこんなにも気に入られキャラになってるのかな!?私何もしてないし何も言ってない!
いや、言ってもいいなら多分言ってますとも。もともとそういう性格ですもん。しょうがないよね、切れたらどうなるか私にもわかりませんもの!

それはまあ、置いておいて。
そろそろ、本気で離してください、イケメンさん。

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