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……言っておきましょう。決して見たくて見たわけではございません。

「試合?お前はまだ出れないよ」

そういったのは、誠凛高校男子バスケットボール部部長、日向順平さん。めがねとツンツン頭がとっても似合っている先輩です。
そして、その日向先輩に投げられたその一言にすごいショックを受けている火神くん。
何でまたこんな場面に出会ってしまったのか。

「なんでなんっっ…でっ…すか、キャプテン!?俺の何が…!!」
「あー、じゃなくて。てか、オマエ敬語苦手?」

うん。私もそう思った。

「一年生まだ仮入部期間だろ!?正式な部員じゃねーもん」

仰るとおりで。
それを聞いた火神くんはものすごいスピードでどこかに駆けていった。スピードの早い事速いこと。

……っと、私も日向先輩に用事があったのでした。

『あ、日向先輩!』
「ん?オマエは…榊原か」
『はい。私も頼みたい事があって…』
「なんだ?マネージャーの数のことか?」
『あ、いえ!私、マネージャーできないので、止めさせてください!』
「……却下」
『何でですか!?』
「榊原…オマエは、オレにその権限があると思うのか?」
『だって!キャプテンじゃないですか!!』
「あのなぁ…基本、部員の事気にするのは俺の仕事だが、全体のは全部カントクがやってることだ」
『あぁぁぁぁ……私の人生詰んだ…終わった…』
「…お、おい……榊原…」
『せっかく…せっかく、テツヤ君がいない隙を突いてキャプテンのところまで来たのに……私の勇気の無駄……』
「……な、なんか悪いな」
『いえ…私の考えが甘かったんです』
「なんだったら、マネージャー増やせるようにいっといてやろうか?」
『ホントですか!?日向先輩神ですか天使ですか!?ありがとうございます!!これでマネージャー増えれば私は解放される!!』
「(……そんなに嫌なのか?自分から希望したんだろ…?)」
『言っておきます!私がマネージャーという立場にいるのは、気付いたらテツヤくんが勝手になんか申請してたんですよ!』
「……なるほどな(黒子…オマエ……)」

私はいかに自分がマネージャーに向いていないのかを力説し、日向先輩をひたすら困らせていた。

そして、月曜日を迎える。
既に私はマネージャー決定されたらしく。なぜか屋上につれてこられた。
……何故だ。コレは。この展開は絶対あれでしょ?叫ぶ奴でしょ?私関係なくね?

「フッフッフ、待っていたぞ!」

そんな満面の笑みで迎えないでください、リコ先輩…。

「……アホなのか?」
「決闘?」
「つーか忘れてたけど。月曜って」
『後5分で朝礼あるじゃないですか!!リコ先輩!』
「とっとと受け取れよ」

私以外には火神くんとテツヤくん。それにその他もろもろ。
みんなその手には本入部届けが握られている。

「その前にひとつ、言っとく事とがあるわ。去年、キャプテンに監督を頼まれたときに約束したの。全国目指してガチでバスケやる事!もし覚悟がなければ同好会もあるからそっちへどうぞ!!」
「…は?そんなん…」
「あんたらが強いのは知ってるわ。けど、それより大切な事を確認したの。どれだけ練習を真面目にやっても、「いつか」だの「できれば」だのじゃいつまでたっても弱小のまま。
具体的かつ高い目標とそれを必ず達成しようとする意思がほしいの!
んで今!ここから!!学年とクラス!名前!今年の目標を宣言してもらいます!ちなみに私含め、今いる二年も去年やっちゃった。
さらに、できなかったときは、ここから今度は全裸で好きな子に告ってもらいます!」

え…まさかと思うけど、コレ私もやるの?わたしもやるんですか?りこせんぱい……?

「さっきも言ったけど、具体的で相当の高さのハードルでね!「一回戦突破」とか「がんばる」とかはやり直しね」
『え、あ…これ、私も…?』

思わす声が漏れた。
相当嫌そうな表情をしていたんだろう。あれだけ宣言していたリコ先輩が、「結衣ちゃんはいいよ」と言ってくれた。
私はこうして一生の恥をまぬかれたのである。

「ヨユーじゃねーか。テストにもなんねー」

そんな事をいいながら、火神くんは軽く跳躍して屋上の柵の上に器用に飛び乗った。
……え、あれ一歩間違えれば死ぬよ?

「1- B 5番!火神大我!!「キセキの世代」を倒して日本一になる!!」

やりよるわぁ…。わたし絶対に嫌だ。
そして、テツヤくんが宣言しようとした瞬間、結局先生が来て、みんなしてお説教受けたのは言うまでもない。

夜。マジバにて。

「ちょっと大声出したぐらいであんな怒るかよ?」
『ちょっとじゃなかったから怒られたんでしょ?なんで私まで……』
「未遂だったのに、ボクも怒られました…。…あと、困った事になりました」
「ホントだよ……ああ!?何!?」
「いきなり約束を果たせそうにないです」
「は?」
『なんか、あれから屋上が厳戒態勢しかれたらしくって』
「入部できなかったらどうしましょう」
『それはないと思うから大丈夫かと』

その心配はないと思うよ、本当に。

「……それより、ひとつ気になってたんだけど。オマエ、そもそも幻のシックスマンなんていわれるぐらいだろ。なんで他の5人見てーに名の知れた強豪校に行かねーんだ。オマエがバスケやんのには、何か理由あんじゃねーのか?」
「…………ボクがいた中学校は、強かったんですけど」
「知ってるよ」
「そこには唯一無二の基本理念がありました。それは…」
『勝つ事が、すべて。だよね』

そのために必要だったのはチームワークではなく。
ただ「キセキの世代」が圧倒的個人技を行使するだけのバスケット。
それが、最強だった。けど…そこにもはや「チーム」はなかった。

「5人は肯定してたけど…ボクには…何か大切なものが欠落しているように思えたんです」
「…で、なんだよ?そうじゃない…オマエはオマエのバスケで「キセキの世代」倒しでもすんのか?」
「そう思ってたんですけど…」
「マジか!?」
「それよりこの学校で、ボクは…キミと先輩のことばにシビレた。今ボクがバスケをやる理由は…君とこのチームを日本一にしたいからです」

おお。火神くんが驚いたようにテツヤくんを見つめている。

「相変わらず、よくそんな恥ずかしい台詞いえんな!
てか、どっちにしろ「キセキの世代」は全員ぶったおすしな。「したい」じゃねーよ。日本一にすんだよ!」

翌日。何を思ったのか、テツヤくんは校庭に石灰で「日本一にします」という文字を残していた。
それは後に、誠凛高校の七不思議になったという。

そして放課後。
名ばかりのマネージャーの私はせっせと自分ができることをやるしかないと開き直り、仕事を始める。
なんか、スコアとかはよく分からないからできる人に任せることにした。
だから、本当に雑用しかしないと心にきめた。

「おい、カントクどうした?練習試合申し込みにいくって言ってたけど」
「さっき戻ったっスよ。何かスキップしてたし、オッケーだったみたいスね」
「……!!スキップして!?」

一瞬にして顔色が悪くなってます、日向先輩。

「オイ、全員覚悟しとけ。アイツがスキップしてるってことは…次の試合相手相当ヤベーぞ」

うわぁ…わたしもちょっと嫌な予感してきた。

「あ。カントク…」
「ただいまー!!ごめん、すぐ着替えてくるね。
…後ね。「キセキの世代」いるとこと試合…組んじゃった……」

語尾にハートマークつきますよ!今のその台詞!!

私は今全速力で逃げたい!!


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