輪廻

風が舞い上がっていた。
つかまれている手首が痛みを訴えつつも、私の意識は目の前にいっている。
テイトの変化。
そして、突然あらわれた死を象徴する姿の神様――。

ふ、とミカゲが笑みをたたえた。


「仲間を呼ばなくて良いのか?」

「テメーなんざ俺一人で十分だ」

『……っ!』


聞き覚えのある声に、私は息を呑む。

じっと、その姿を見つめた。


「聖域の中で随分派手に遊んでくれるじゃねぇか」


この乱暴な言葉遣い。
偉そうな態度。
どこかで、出会ってはいないか?

自分に自問自答したいが、自答が出てこない。
引っかかっているのに、分からないもどかしさが伝わったのか、ミカゲが私の手首を強く引っ張った。

突然の事で踏ん張りが利かず、私はミカゲの胸に倒れこむようになる。

声を上げられなかったの社、手首の痛みのほうが勝って、そちらに意識がいったからだ。

無意識に、相手に弱みを見せまいと歯を食いしばってしまった。
私は、ただされるがままの状態の人形と同じ立場にいるということを、忘れてはいけない。

相手は、私を殺す事なんて簡単にできる人間なのだ。
何の力も持たない私がいくら抵抗したって、相手は痛くもかゆくもない。
拘束するのだって、意図も簡単にできる事だ。

だから、私はただ手首をつかまれているだけなのだ。
何もできないただの小娘。

それが、何の力も持たない私の立ち位置。

そのとき、テイトの咳き込む声が聞こえてきた。


『……!!』


思わずそちらに眼を向ける。

しかし、すぐに私の視界はミカゲの体で隠されてしまう。
移動しようとしても、それすらできない。
私は、やっぱり操り人形だった。


「傲慢なところは相変わらずだな。ゼヘル」


酷く冷淡な声音。
それを聞いた瞬間の私は、背筋に悪寒が走った。

怖いという感情が体を支配して、私を震えさせる。


「へえ…お前、誰?俺の姿を見て生きてる奴はいないんだけど?」


―――――ゼヘル―――――


脳裏に思い浮かんだのは、一つの単語。



『セ、ブンゴーストの……!?』


小さく囁いて、私は強く手首を握り込まれ、眉を寄せる。


「貴様に、神のご加護を」


やっぱり、聞いたことのある台詞。
それに気取られていると、死の象徴をした神がなぜか驚いたような気がした。

私は、とりあえず手を離してもらおうともがいてみるものの、あまり意味がない。

痛みに顔をゆがめて、それでも逃げようとする私を不愉快に思ったのか、ミカゲの顔にだんだんと苛立ちが募っていくのが分かった。

けれど、そんな事、私の気にするところではない。

私は、とにかくミカゲを強く睨んで離してもらえるようにする。

しかし、私の睨みなど痛くもかゆくもないと言うふうにミカゲはふいと視線を逸らす。

瞬間に、脳裏にまた声が響いてきた。


――《―――――!!》


驚きに、息をつめる声。


――《なんてことを。魂が翼に食われてやがる。こいつはもう、助からねぇ…!!》


私の体が、硬直した。


『う、そ……』


呆然と呟いた私の声を拾ったミカゲが、敵とも言えるものたちに背中をむけ、私を見つめる。

その瞳には、いつもの優しさは欠片も見つけられなくて。
その表情は、いつも拍子抜けするほどの笑みはない。


『助からないって……そんな、の…嘘、だよね……?』


見たくない現実は、見るものではない。

そう、私は学習している。

だって。
そうしなければ。
私は――。


―――――私は、自分を守れないから―――――


「嘘ではない。それに、この体は元々“使い捨て”だ」

『――!!いい加減にしてよ!』


そういって、私は空いている手でミカゲの頬をひっぱ叩いた。


『人の命をなんだと思っているの?それに、あなたはそれをやって何の利益があるというの?人から大切なものを奪って何が楽しいのよ!!』

「……」

『返して。ミカゲを…返してよ!!あの人は、光になるべくして生まれた人なのよ!光は、いつまでも光っているわけじゃないけれど、とても大切な存在なのよ!?』

「……」

『ねえ、お願いだから……テイトに悲しい思いをさせないで……ミカゲ……ッ!』


酷く、自分勝手だなと思う。

酷く、残酷だと思う。

けれど、それほど彼は、テイトの光としての存在があった。

私の話も、笑わずにすんなり受け入れてくれて。


『戦いのない世界が…うらやましいって言ってくれた……のに…』


平和な世界に、憧れているようだった。

いつ死んでもおかしくないこの世界で、彼ら軍人たちはいつも死と背中合わせに戦っている。

私からしてみれば何を言っているのか分からない世界だけれど、ミカゲやテイトからしてみれば、私が語った世界こそが信用できない事だっただろうと思う。

それでも、彼はうらやんでくれていた。

大切なものを守るという瞳をして、私の世界をうらやんで、そして、この世界を平和にしようと考えていたはずだ。

彼の夢は、ここで終わらせてはいけないものだと、私でも分かった。


『ミカゲを…弄ばないでよ……!!』


その瞬間に、テイトがゼヘルに縋りついた。


「ま…待ってくれ。ミカゲは、きっとまだ生きている!!」


必死に縋りつくテイトの心の叫びは、私の心を蝕んでいく。

聞きたくない。
それなのに、聞こえてくる。





―――――だれだっていい もし お前が 神様なら―――――



タスケテ



「テイト=クライン。ミカゲの魂は、永遠に救われず、絶望の淵を彷徨う事になる」




―――――どうか 神様なら ミカゲを―――――



「声を上げずに泣いている。苦しくて、悲しくて――」


酷く、残酷なことばのようにおもえてしかたがなかった。

もう、わたしはそばにいくことさえも許されない。
そんな感覚を、味わって……。


「……ユキ」

『……?』


名前を呼ばれて私が顔を上げると、ミカゲの顔がすぐそばにまで近づいていた。
思わず逃げようとしたけれど、つかまれている手首を引っ張られて腰を取られる。


『……やめ……っ!離して!』


突き飛ばそうと手を伸ばそうとしても、距離が近すぎてそれすらもできない。

唇に、暖かな吐息を感じた。


「お前が私のものだという印を、ここに刻んでおこう――」


そういわれたかと思うと、私の唇は何かちがうもので覆われていた。


『―――――っっっ!!』


ほんの数秒――いや、一瞬だったかもしれないそのふれあいの後、私は乱暴に遠くに投げられ、しりもちをつく。


「…いっただろう。だから貴様は『手ぬるい』のだ」


くるりと振りむいた私の眼に映ったのは、ミカゲが自分の体に鎌を入れているところだった。


『――――――!!!!』


言葉が出てこない体験を、これで何度味わったのだろう。


「私が憎ければ、我が帝国軍に復讐しに来い!!テイト=クライン!!」


血しぶきが、上がったように見えた。


「ああ、ゼヘル。君に言うのを忘れていたよ。“あの鎌”は元気か?」


ゆらりと、視界が揺れていく。


「あれは、いずれ私の元へ戻る運命なのだ。それまで丁重に扱うがいい」


軍服を着た、冷酷で、冷淡で、残酷で、狡猾な人を、見た気がした。


「まさか、お前は!!!」


酷く切羽詰った声。
それなのに、私にはそれが遠くで聞こえているような気がしてならなかった。

どうして。

どうしてこうなってしまったんだろう。

目の前で、鎌が体に深く刺さっているのを、見た。

どうして。

そんなありきたりな言葉しか出てこない。

私は、自分が何をしたいのかすら、分からないでいる。

酷く、惨めな存在。

ミカゲの背中にあった骨組みの翼が、パキパキと音を立てて崩れていく。

それと同時に、ミカゲに、表情が戻っていく。
しかし、私がそれを視ることは、あまりかなわなかった。

叫ぼうとしても喉が凍りついたみたいに声がでなくて。
私は、自分がこれほど無力な存在だったのだと、思い知らされた。


「ミカゲ!!行くな!!」


テイトの叫びが、耳の奥で響いて、消えていく。

それを、眼を開いてその眼に焼き付ける事しか、私にはできなくて……。

ミカゲが、走っていくテイトを受け入れて、抱きしめる。

もう一人じゃないから。

寂しくないよという、気持ちの篭った抱擁を最後に、ミカゲは姿を消して行く。

ふわりふわりと舞い散るその天使の羽は、私には、とても残酷に見えて仕方がなかった。

手を伸ばしたかった。

でも、私のその資格があるのかどうかが分からない。

ただ、泣く事しか私にはできないと思った。
それだけでは嫌だと心が訴えても、私は所詮、ちがう世界の人間。
〈この世界〉に干渉してはならないもの。

それを忘れていたのは、ここにいる人たちが、あまりにも温かい心を持っている人が多かったから。

静かに近づいてきたミカゲに、私はただ泣きじゃくって、謝ることしかできなかった。

ごめんなさいと、何度も何度も。
声がかれるまで、何度でも何度でも。

それしか、私にはできなかったから。

ふと、頬に温もりのようなものを覚えて私は顔を上げる。

目の前には、綺麗な笑顔を持つ好青年。

少しくすんだ金の髪に、頬に十字傷を持つ青年。

その人の顔を見て、私はやはり泣くことしかできない。

余計な事をしなければ。

あの場に私が残っていたならば。

そうすれば、ミカゲがあんな辛い目に合うことなんてなかったはずなのに。
私は、自分の身が可愛いばかりに、一人の人間を犠牲にして、今ここの土地を踏んでいる。

酷く、滑稽だと――そう思わずにはいられなかった。

涙でぐしゃぐしゃの顔の私を見ても、ミカゲは優しく微笑んでくれている。

私は、それすらも、私を責めているようにしか見え無くて……。


『ご、めんね……ミカゲ……ごめんね…!』


ありきたりな言葉。

分かってる。

こんなことを言っても、あなたが困るだけだって。

でも、伝えずにはいられない――謝らずには、いられないのだ。

いつも、いつも言われていた。
いつも思われていた。


どうして。






――――――――どうして、お前なんかが生まれてきたのだ、と――――――――





そんな私を受け入れてくれる人など、そう多くは無い。

そんな事は覚悟の上だったのに。

ここにいる人たちは、暖かすぎる……。


『どうして、否定してくれないの?どうして優しくするの?どうして、私を受け入れるの?どうして……どうしてどうし――』


言葉が、途切れる。

感覚なんて、もう無いはずなのに、止めざる終えなくて。

私は。
言葉をせき止める。

柔らかな感触があるわけではない。

ただ、暖かなものに包まれている感覚がするだけだ。

ミカゲは、私の唇を奪って、そのまま消えていった―――――。






―――――
―――







「もう良い。行け」


そういって、アヤナミは自らが掌で弄んでいた光の弾を中に放り出す。

次に、折れた右の肘を生々しい音を響かせながら直していく。

最後に、頬にある裂傷を手をさっとかざし、滑らせることで癒す。

それとは逆にあるはずの、叩かれた痛みはそのまま放置した。
これは、始めて自分に手をあげたあの少女が残した傷跡だ。

そして、考えた。


――なるほど。ミロク様がこの私をわざわざ出向かせるわけだ


納得したようにしてから、アヤナミは深く椅子に背をもたせ掛ける。

そのとき、自分が掴んでいたわけではないものの、ミカゲの体で触れていた少女の暖かさを思い出す。

面白い能力をもっているみたいだったが、あの少女自身はまだ気付いていないし、おそらく、気付いたとしても使おうとは思わないだろう。

〈少女の世界〉の話を聞く限り、少女の力はあまりにも異端のはずだ。
使うわけが無い。

ということは、やはりあのままあちらの手に渡しておくのは少々危険が伴う。
何せ、アヤナミたちはこれから、あの候補生を狙っていかなければならないのだから。

そのそばに少女がいても、手加減などできはしない。

それなれば、こちらのそばに置いておいたほうが安全だ。







―――
―――――





私は、なんて無力な人間なのだろう―――――。

何もする気が起きなかった。
何も考えたくなかった。
何も――信じたくなかった。

どうして彼が死ななければならなかったのか。
どうして、彼が犠牲にならければならなかったのか。
どうして、求められている彼が――死ななければならなかったのか――。

私が、どうして生きているのか。





それだけが―――――理解できなかった。





――〈テイト〉――



はじめてアイツにあったときのことを、覚えてる。

初めて宿舎に入ったときだった。
反応もせずにただ立っていると、突然、アイツはオレに抱きついてきた。
思わずの条件反射で、オレはアイツを殴り飛ばしてしまったが。

学校って場所は、異質なものを疎ましがる。
オレは、噂と中傷の的だった。

――でも、ミカゲだけは、違った。

オレへの噂をまったく気にしない。
ミカゲは、オレの唯一のダチだった。

奴隷だという噂は、既に全校生徒に広がっていたにもかかわらず、ミカゲはずっと俺のそばにいてくれた。

それだけでも、すごくありがたかった。

心地のいい環境は、それが出来上がったのは、全てミカゲがいてくれたからに他ならない。

いつでもミカゲの言葉は胸に沁みた。

不思議だった。

そのたびに、胸が熱くなった。


――「必ず前を向け。光のある道を進むんだ」


ミカゲ…――お前がオレの光だったんだ。


【翌日】


「朝食食べないと元気でないよ、テイト君」


優しげな声が響いた。
それでも、テイトの反応は何も無かった。


「心配ですね…鍵もかかってますし……」


――大体の話はフラウに聞きましたが…


カストルも、心配そうな声を上げてテイトのいる部屋の前にいた。


「何故彼女達は、テイト君たちを侵入者と見なしたんでしょうね」


と、カストルが考えた瞬間に、後ろからズカズカと足音を立てて近づいてくるものがいた。

そのものは、カストルを通り過ぎると、そのまま容赦なく、扉を蹴破った。


「ジャマするぜ、クソガキ」


そういって、扉を蹴破った後には少し慌てたような声が聞こえてきた。

しかし、テイトはそんな事を気にする余裕すらなかった。


「なんだよっ!!勝手に入ってくんじゃねーよっ!!」

「オレは用があるんだよ」


にべも無くそういいきったフラウに、少なからず苛立ちを覚えたものの、起こる気も無く、テイトはそのままにしておいた。

というよりも、泣いていたという事をあまり知られなくなくて、急いでこすっていたために、フラウをまともに見られなかったというほうが強い。

そのとき、ミカゲの軍服に何かがもぞもぞと入っていくのが目に入り、テイトはそれを見ながら思わず質問を投げかける。


「…なんだ、これ…?」

「教会の動物セラピーだ」

「…教会なんか、何の救いにもならねーよ…。神様なんて信じねぇ!!ミカゲを助けてくれなかったじぇねぇか!!ミカゲを…」


言葉が、途切れた。
それは、ただの八つ当たりだなんて、テイト自身にも分かっている事だ。


「…違う」


脳裏に蘇ってきたのは、卒業試験を受ける前に、あわせた拳。


「本当は、俺のせいで、ミカゲが…親友の誓いなんて交わしたから、だからミカゲは…っ!」


止まらない嗚咽。
どうして自分は、他人を不幸にしかできないのだろうという悔しさ。

ミカゲだけは、守りきりたかったという願い。

でも、それは所詮無理だったのだという事を突きつける現実。

それらが一気にテイトの胸中に渦巻いて、どうしてもついていけない気持ち。

何が正しくて何が正しくないのか。

今のテイトには何も分からない。

ぽんぽんと、頭を少しぎこちなく叩く手がある。


「お前が悪いんじゃねぇよ。
…人は、生まれてくるとき、天界の長と約束するんだ。三つの夢を――それを全て叶えると、また長の御許に呼ばれる。
ミカゲの三つ目の夢は、きっと【大切な奴を命がけで守りたい】」


ぎりっと、被っている帽子をきつく押さえつける。


「だから、アイツの夢は全部かなって」


――テイト。お前のせいじゃない


「最後の最後は穏やかに天に召されていった」


――オレのせいだ


「ミカゲはお前を守れて幸せだったはずだ」


――オレがお前たちを守ってやれなかった


「そんなの、残された人間のきれいごとだ。オレを慰めようとしてるだけなんだろ」


流れた涙を、舌で舐め取る何かがいた。


「まあ、その通りかもな。でも、あいつはもう…お前を側で見守ってるんだぜ」

「?」


言葉の意味が分からず、テイトは眦に涙を微かに浮かべながらフラウを見上げ、そして自分の膝の上に乗っている生物を見た。


「ブルピャー!」


ウサギよりも一回りほど小さな体躯。
ピンク色の毛並み。
ウサギのように長い耳。
それでも、そのそばには小さな角が二本、申し訳程度に生えている。


「これ…まさか……デコ怪我してる……」

「巣から落ちてたところを保護してやったんだ。一度落ちると親はメンドーみねーからな」


優しさに満ちるその声は、今までに聞いたことが無い。


「夢を全てかなえた魂は、また新たに転生するんだぜ。そいつの魂は、ミカゲと【同じ色】をしている」


それは、神様からの贈り物。

大切なものはいなくなった。

それでも、また、自分の元へと遣わしてくれた。

たとえそれが、偶然であっても、必然であっても。

その目の前に起きた現実こそが事実。


「前世を失っても、広い世界でたった一人、お前を見つけて帰ってきたんだぜ」


もう、後には泣く事しか――――――残っていない。



――テイトとあの少女を襲った奴…あんなふうに魂を弄びやがって。許さねぇ


――「あれは、いずれ私の元へ戻る運命なのだ」


――俺があの鎌をもっていることを知ってた。まさか、オレたちが知らないうちに【アレ】目覚めたとでも…!?


と、取りとめも無い事を考えていると、フラウがテイトの首に何かがついているのを見つける。


「…あれ?お前そんな首輪してたっけ?」

「!…ああ、これは…」


――そっか、ミカゲが消えたから外れるんだ…


そんな事を考えていると、フラウがどこから出したのか、巨大なはさみを持ち出し、テイトに近づいていく。

それを全力で逃げ回っていると、首輪が突然カッと見開き、がぷっと容赦なくフラウの指にかぶりついた。


「「ぎゃあ――――――――っっっ!!!!」」


二人の悲鳴に、カストルとラブラドールが入ってきた。


「テイト君!?」

「外せ――っ!!今すぐ外しやがれーっ!!!」

「俺が何をした―――!!?」


ぎりぎりとフラウの首を締め、そしてテイトは必死だった。

それほどまでに必死だった。


「いますぐ降りやがれ、このクソガキ――!!」


そうフラウが叫んだ瞬間に、テイトはがくんと仰け反り、フラウから離れる。

しばらくして。


「サイアクだ…」

「…それは誓いの首輪といって、血で御主人様を認識するんですよ。あなた何勝手に契約してんですか」

「誓いの首輪?」


疑問を口に出すフラウ。

それにさらりと酷くいやな事を口に出すカストルだった。


「ちなみに、…二人が48時間以上離れていると、その首輪は爆発するらしいですねぇ。聞いてます?」


――聞きたくなかった!!


「何かすごい殺気を感じるぜ!」


びっと親指を突き立ててかっこつけるフラウ。
が、かっこはつけているものの、ドラゴンががじがじと指先を噛んでいるのでいまいちかっこがつかない状況になっている。

少しテイトから離れ、フラウが自分の指を噛んでいるドラゴンをむにっとつかむ。

そして、囁いた。


「…また、生まれてきてくれてありがとな」


――人間に生まれるように神に願う事も訳なかっただろうに……。

生まれ変わっても、あいつを守りたいわけか―――――…。




To be continued


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