Nightmare-4


「おやおや」


自分の横を通り過ぎていった生徒達には聞こえないような小声で、カストルは呟いた。


「そんなに挑発するなんて、いけない子ですねぇ」


ふ、と小さく微笑みながら、カストルのほうも歩みを進め始めた。



―――――
―――




夜。
私は、テイトについてきたため、今カストルさんとテイトと一緒にいた。
教会の外だ。

といっても、第七区からは出ていない。
いうなれば、すこしはなれたところとでも言うのだろうか。

私は側にあるお花の花壇の淵にちょこんと腰をかけてその光景を見守っていた。


「今日はテイト君の精神力を鍛えましょう」


おもむろに告げたカストルさんの声は優しいけどどことなくとげがある。

理由を知っているために、私はなんともいえなかった。


「昨日の特訓で、貴方は二本目のバクルスを破壊しました」

「スミマセン」


すかさずテイトが謝罪を入れる。

そうなのだ。
テイトはバクルスを日本も破壊してしまったのだ。
それも、フラウさんから借りている上級用のバクルスを。

コレにはさすがにカストルさんも見過ごせなかったそうで、方法を変えた鍛え方をするようだった。


「貴方のザイフォンは爆発的な瞬発力を持っていますが、軍で叩き込まれた、最短で敵を殺す能力がそうさせているのでしょう」


思い出すように、テイトは少しくらい顔をしていた。

私は、見守るだけしか出来ない。


「バクルスを扱うために必要なのは、心の強さを一定に保ち続ける事です」


真剣なテイトの表情は、私には向けられないものだなぁ、と思わず考えてしまう。

彼の表情を真剣に出来るのは、私以外の人間が必要だ。
彼の表情を、笑顔にするのも、私にはできない事だ。

結局、ここにいても何もできないんだなと考える。

誰かの心の支えになりたかったわけではない。
誰かに心の支えになってほしかったわけでもない。

何かに縋らなければ生きられないなんて、私はそんな事は認めない。
認めたくない。


「まずは教会の周りを走っていただきましょう」


体をほぐしていたテイトは、カストルさんのその言葉に驚いていた。


「走る?それだけでいいの?」

「それだけではありません。苦しさに耐える事で、己に打ち勝ち、精神力向上につながるのです!」


……カストルさん。
やっぱり貴方はとてもいい人です!!

と、思っていると……。


「そんなテイト君のために優秀なサポーターを用意しました」

『……わー……』


カストルさんの後ろには何体いるのか分からないけれど、なぜか少しフラウさんに似た人形がたくさんいた。


『(……悪夢にでてきそう……)』


などとは口が裂けてもいえない。


「彼らと競争して、ビリにならなくなったら今日の特訓は終了です」


最初からテイトが負ける前提で話してる…。
テイトの表情から見ても、私がおもっていることと同じことを思っているらしい。


「そういえば、フラウは?」

「…彼は夜のほうが忙しいんですよ」


何か、含みのある言い方だったけれど、カストルさんはさらりとその会話を交わす。
上手いなぁと感心してしまう。


「それではテイト君の走るレールを作ってさしあげましょう」


そういうと、カストルさんの手からザイフォンが発動して、ばしゅっと微かな音を立てて地面にレールが作られていった。


『すごーい……!』


感動。
その一言に尽きる。


「この上を走ればいいの?」


すっとテイトが足を乗せた途端。


『テイトッ!?』

「うわっ!!」


ぽーんっ、とテイトが上に跳んでいった。


「踏むと2メートルくらい飛ばされるので注意してください」

『も、もう少し早くいってあげてください!』

「何事も経験です」


にこやかに笑いながらさらりと言葉を交わされてしまった。

飛ばされたテイトは少し不満そうな表情をしながらも冷静に解析し、言葉を投げかける。


「えっと、常に一定のシールドを張り続けながら走るって事?」


フォン、とテイトの周りに文字が出来上がり、それはテイトを囲むように顕現する。


「フフフ…、察しがいいですね。では、そのまま。よーい…」


え?

と思ったときには、カストルさんの掛け声がかかった。


「どん」


ぱん、と軽く手を叩いた瞬間にテイトの周りにいた人形は、ものすごいスピードで走り出す。

さすがにそれには驚いた。
テイトも同じようだったけれど。

しかし、人形相手に負けたくないのか。
テイトはスーッと息を思い切り吸い込んでから、こちらもすごい勢いで走っていった。

……ちらっと、カストルさんを見ると、にこやかに笑っている。
しかし、私は聞いてしまった。


「血の気の多い子は鍛えがいがありますねぇ」


……カストルさん…。
私がいる目の前でそんな事を呟かなくても。


『…いじめるのもほどほどにしてあげてくださいね……』

「いじめるだなんてとんでもない。彼を鍛えないといけないのですよ」

『……そうやって義務的に話すにも、ちょっとどうかなって思っちゃいます。私、ひねくれてますから』

「正直な子ですね、ユキさん。けれど、義務でも何でも、今のテイト君は私達に協力を仰がないといけないと自覚しているはずです」

『…そうですね。テイトは、自分の弱さを受け入れていますから…』

「……自覚がないだけですか」

『え?』


小さな囁きは聞こえなかった。


『…ところで、テイトたちってこの教会をぐるっと一周してるんですよね?』

「はい」

『……距離って、どのくらいあるんですか?』

「一周4キロメートルです」


語尾にハートマークがつくんじゃないかというぐらい、彼はにこやかに応えて見せた。


『……そ、そうですか…』


私は、この人はにこやかにスパルタ教育をするものだなと、思わず思ってしまった。


『あ、テイト』


ようやく見え始めたテイトの姿。
しかし彼は勢いよく走っていたわりにはラスト二人に入っている。
相当辛いのだろうか。

後ろのほうには、あまり調子がよくなさそうな人形が走っていた。
テイトもそれを自覚しているのか、抜かれまいと一生懸命に走っている。


『テイト!がんばっ……あ……』


応援をしようと立ち上がって私は中途半端な格好のまま止まる事となった。

なぜなら。

テイトの後ろを走っていた人形が、クロスタックルをかましたからだ。

それをもろに受けたテイトはレールから外れるわ、勝負のかけっこには負けるわという結果になる。

怒りたくなる気持ちが、ものすごく分かってしまう。


「ぶっ壊してもいいですか?」

「ダメです」


ごき、と指を鳴らす辺り、本当に壊しそうな勢いだった。
しかし、すかさずカストルさんが否と応える。

そして、次に笑っていった。


「人生に平坦な道などありませんよ。はい、よーいどん!」


ぱむっと、軽く手を叩く。

テイトは涙目になりながらそれを甘んじて受けていた。

しかし、集中力が続かなかったのか、ぽーんと飛ばされていた。









教会の少し上のほうに、二つのカゲがあった。


「クロユリ様、チャンスでは?」

「…………、護衛が多すぎる」


冷静なその言葉を発したその子は、下を見つめている。
そこには、人形に囲まれるように走っているテイトがいる。

そして、少し視線を違うほうへ向ければ、あの異世界からやってきただろう少女も。

しかし、少女のほうはそばに司教が控えている。
無理をすると、計画が上手くいかない。


「焦ると勝機を逃しちゃうよ、ハルセ」


そういったかと思うと、底から二人の人の気配が一瞬にしてなくなった。

くたくたになったテイトの後についていき、部屋に戻る。
テイトはぱたりとベッドに倒れた。

結果は、見事なまでに全敗。
完全なる敗北で今日は終わった。


『今日は、テイトがベッドを使って眠って』

「……悪い……」

『いいのいいの。私、ただ見ているだけだったんだし。ゆっくり疲れを取って』


そういって、私は眠い目をこすりながらまずシスターさんに借りた布団を敷いた。
その後にテイトが後ろを向いているのを確認してもぞもぞと着替えを始める。


「ハハハ…ごめんな。置いて行っちまって」

『テイト……おやす、み……』

「ああ、おやすみ。ユキ……」


私は、意識がふと飛んだ。




―――――
―――




テイトはユキが寝たのを確認した。
規則正しく、寝息が聞こえてくる。
自分の修行に付き合ってくれている彼女は、必然的に眠る時間が遅くなる。

申し訳ないと思っていても、彼女から目を離すことが出来ないので、好きなようにさせている。
くるん、と布団に丸まって眠っている姿は愛らしい。
長い黒髪に、意志の強そうな瑠璃の瞳はいつ見ても魅了される。
そして、その奥に潜んでいる悲しみも。


「…着替えるか」


そういって、テイトは着ている服に手をかけ、バサッと脱ぎ捨てる。

ハクレンはふ、と眼が自然と覚めた。

ちょうど向いていた方向が壁側ではなく、テイトが使っているベッドの方向だった。

自然、ベッドの上に視線が行く。

ぼやけた頭でも、視界ははっきりしていた。
テイトの背中に、焼印があるのを、見つける。

しかし、ハクレンは、テイトが夜遅くに何をやっているのかやっているのか知らなかった。


――…こんな夜遅くまで何をやってたんだ?


そして、静かに体を起こし、思考を動かす。


――それに…あれは戦闘用奴隷の烙印じゃないか。どうりでザイフォンの量が半端ないわけだ
――…こいつの事、小学生とかいっちまったけど、ひょっとして小学校にも行かせてもらえなかったんじゃ…


そのとき、テイトが体を起こしているハクレンに気がつく。


「!!」


相当驚いていた。
当然だ。
いつもこの時間では、ハクレンは眠っていたのだから。

しかし、テイトは自分が起こしたと思ったのか、ハクレンに謝罪を入れる。


「あぁ、悪い…起こしちまったか?」

「……そいつ、お前がいない間落ち着きがなくて大変だったぜ」


そいつ、とさされたのはミカゲだ。
テイトは、優しさの滲む表情で、ミカゲを見つめた。


「コイツは、オレのダチの生まれ変わりなんだ」


はぐ、とテイトが着ていた服を咥えながら、ミカゲはテイトを見つめている。

しかし、それをきかされているハクレンは無反応だった。


「…………」

「べっ、別に信じなくてもいいんだぜ!?」


しかし、テイトが予想していたハクレンの反応とは違った反応が返ってきた。


「お前の兄弟みたいだな、そいつ」

「!」


ハクレンの言葉にテイトは驚く。
その間に、ミカゲがテイトの肩にぴょこんと乗り移る。


「…だろ?オレは、こいつのために試験を受けるんだ」


優しい笑顔。
慈愛に満ちた、表情。
満たされたようなその雰囲気。

ハクレンは驚いた。

そして、急激に後悔が襲ってくる。


「…初めてお前に会ったとき、礼を欠いてすまなかったな」

「!オ…オレも、お前のファミリーを悪く行ってごめん…」

「オレが教会に来たのは、母様がコールに侵されてしまったことがきっかけだ」





母が、コールに犯されてしまった。
それでもオレは、母親をどうしても助けたかった。
自分を生んでくれた人だ。
それだけ、感謝してもしきれない存在だった。
しかし、母はコールに侵されてしまった。

だが、何かのキセキか、そのときちょうど巡回司教が近くを通ったのだ。
それを知ったオレは、慌てて父にそれを報告し、この方に頼んで母を助けてほしいと懇願した。

しかし、父はそれを許さなかった。
家名が穢れるのを恐れ、母を部屋に軟禁した。

オレはないていた。
しかし、泣きつかれていつの間にか眠ってしまっていた。

ふと、覚醒したんだ。
そのとき、目の前に司教が立っていた。


――「もう大丈夫だ。母ちゃんを大事にしてやりな」


その言葉を受けて、すぐに母の胸元を見たオレは、母の胸元にあったまがまがしい刻印が消えている事を確認した。

すぐにお礼をいったんだが、底にはもう既に、その司教様はいなかったんだ。


――きっと、神様が僕のお願いをかなえてくださったんだ!!


幼心に、そう思った。





「結局、オレが勝手に司教を呼んだってことになって、ひどく叱られたけど、母様は取り付かれたときのことをほとんど覚えていなかったし、父様も離婚なんてスキャンダラスな事はしなかった」


ただ、一族の恥になり、自分の地位を保つためにしたことだと、ハクレン自身も理解していたが、そんな事は関係なかった。


「もちろん、軍人か政治家以外はオーク一族として認められない。お前が言ったとおりさ」


それでも、曲げられない思いがあった。


――オレは絶対に父様を許さない。
――父様と同じ道なんか進むもんか!!


幼心に誓った。
そして、反対を押し切って、家を出た。

母だけは、それを許して、見送ってくれた。


――「―――――精一杯、自分のやりたい事をおやりなさい」


今でも、一言一句忘れることはない。


「フラウ司教はオレのことを覚えていないようだけど、オレはあのお方のように少しでも誰かの役に立ちたいと思っている」


確かな意思、決意。

そのとき、ふと床で丸くなっている少女が眼に入った。

長い黒髪に、美しい瑠璃の瞳。
瞳の奥に隠そうとしている深い悲しみを、理解してあげられない事が、今は辛い。


「……テイト、ユキは、一体どういう存在なんだ?」

「…分からない。詳しい事は聞いていないけど……確かにいえることは、ユキはオレたちが今当たり前に生活しているこの世界の住人じゃないと、本人は行いっていた」

「……随分、おおそれた話なんだな」

「そうだな。でも、ユキはそういってた」

「………何を、抱えているのだろうな…」

「?」


はっとした。
ハクレンは自分がこんなにも少女のことを気にしていたことが急に恥ずかしくなり、慌てて布団にもぐる。


「早く寝ないと体に悪いぞ。おやすみっ」


その行動に、テイトは優しく微笑み、言葉を返した。


「…お休み」




―――
―――――




〈特訓5日目〉


テイトは、がんばっていた。

人形の攻撃を避けつつ、攻撃を与えつつ。
自分を守っているザイフォンの守りが溶けないよう、細心の注意を払って。

そして、今日……やっとあの人形達から勝利を奪っていた。


『おめでとう!テイト!やっとだね!!』


まるで自分の事のように喜ばしい!
が、テイトはある意味瀕死状態だった。

荒い息を繰り返している。

少し離れたところで、カストルさんがぱちぱちと手を叩いていた。


「おめでとうございます」


ぱしゅっと手に持っていたバクルスをテイトに差し出した。


「プロ用のバクルスをさしあげましょう。あの人形達を的に使って御覧なさい」

「上等だ!!」


心の声にすらなってないよ…テイト……


フォォォ、と微かな音がした。
テイトのもっているバクルスの先には球体のようなものが出来上がる。

それを見たカストルさんが、言葉をかけた。


「それが基本の形です。飛ばして御覧なさい」


テイトがそれをブンッ、とふると、カストルさんの愛情込めて作られた人形達に当たった。


――は、初めてまともに出た…!!


さささっと、人形さんたちが点数を出していく。

中には80点と言う立て札を出した人形さんもいて、私は当然のことながら100点満点を予想していた。


――おお…結構いい点数なんじゃないの?


ひとり感動していると、夢を壊しにかかるのはやはりカストルさんだった。


「ちなみに1000点満点ですよ」


――……ま、紛らわしいわ……


そう思うが、一番がっかりしているのは多分テイトだろう。


――そのバクルスを本格的に扱うのはまだ難しいはず。
――しかし、体を極限状態に追いやる事でテイト君に無駄がなくなっている


カストルさんの横顔は、なんだか満足そうだった。

そのとき、ふと眼に入った何かに気を取られ、私はふらりとそれに近づく。

そこには――。


『…ハクレンさん?』

「!!」

『こんなところでどうかしたんですか?』


疑問をそのままぶつけていると、少し離れたところから、カストルさんも声をかけてきた。


「よろしかったらそちらの方もご一緒に練習していきませんか?」

「!」


私とカストルさんに見つかったからか、ハクレンさんはほんのりと頬を染めて、胸を張っていった。


「…オレはコイツが寂しがっていただけなので届けに来ただけです」


そういって、すっと差し出されたその手の上にはミカゲがちょこんと乗っていた。


『ミカゲ!寂しかったの?』

「ぴゃー!!」


ばっとハクレンさんの掌から跳躍して、ミカゲは私の胸に飛び込んできた。
ふわふわしていて気持ちがいいし、落ち着く。

ミカゲは、私に擦り寄ってくれた。

それからは、ハクレンさんも練習に加わり、だいぶ厳しい強化訓練みたいになっていた。

私はミカゲを抱きしめながら、その様子をただただ傍観していた。



帰り。

私達は三人並んで歩いていた。

あれだけハードな練習をしていたにもかかわらず、ハクレンさんはある意味ぴんぴんしている。
テイトはよろよろだったけど……。


「俺達の練習に付き合ってくださるなんていい司教様だな」

「ああ、カストルさんっていうんだ」

「か……」


テイトの言葉に驚いているハクレンさん。
しかし、何かを思案したかと思うと、自分に納得のする答えを見つけ出したらしい。

私はというと……。


『……ふぁ……』

「……ユキ、ゴメンな?こんな時間まで、いつもいつもつき合わせて」

『…ん?ううん。大丈夫。私が勝手についていってるだけだし。テイトは何も悪くないよ?』

「しかし、普通女は美容を気にするものではないのか?」

『………それは、嫌味かしら…』

「ふつうは、といっただろう。それが普通ではないものがいても別に驚きはしない」

『はいはい。今までハクレンさんの周りには、私みたいなタイプの人間はいなかったってことなのよね』


少しおどけていってみせる。

雰囲気が柔らかくなった気がした。

瞬間――背後でぽーんと何かが弾んだ。

背後で、パキィィン、と甲高い音がする。


「「『!!??』」」


何かが攻撃を仕掛けてきた。

二人は反応できたけれど、所詮私は常人。
特別な反射神経もなければ、避ける事など皆無。
無残にも、教会の高いところから、中に放り投げられた。


『!!』


声が出ない。
落下していく恐怖に、喉が凍りつく。


「「#ユキ!!」」


二人が名前を呼んで、手を伸ばしてくれた。

私は、反射的に、二人の名前を呼んだ。


『テイトッ、ハクレンさん……!!』


伸ばされた手に、私の手を伸ばす。
つかんでくれる。
しかし、それでも落下速度が落ちるわけではない。

地面にぶつかる事を予想して、私は強く瞳を瞑った。

そのとき、ひゅっと風を切る音がした。

ズダァァン!!

と音を響かせて、着地する。


「つかまってろ、クソガキ」


そういったのは、他でもないフラウさんだった。
彼は私が女という事もあってか、ハクレンさんと同じ腕に抱えて、私を支えてくれている。

…正直、ありがたい。

私は捕まっていられる自信などまったくなかった。

後を追ってきた黒い塊ようなものが、攻撃を仕掛けてくる。

しかし、フラウさんはいつの間にか出したあの大きな鎌でそれを八つ裂きにした。

もう、気を失ってもいいだろうか……。

私は、そう本気で考えた。

瞬間、何かが干渉したかのような感覚になる。
驚きに、目を見開いた。

どうして――……?


「現れましたね」

「うん。すべてアヤナミ様が仰っていたとおりだ」


幼い容姿。
そして、背の高い男性。

見覚えのあるその姿に、私はただ愕然とした。


「見つけたよ、ゼヘル」


そういったのは、間違いなく。

私が天才と思っているあの子――クロユリさんだった。


To be continued才と思


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