言葉の壁2
〔言語の壁2〕
「あーあ、皺になっちまった」
「干すときによく叩いてから干さなかったのだろう」
「……あんた、ほんと何でも知ってるよな」
「常識だ」
「いや、そういうんじゃなくって、あんたから生活の知恵が出てくるとなんか以外っていうか似合わないっていうか」
「妻から教わった」
「つ……!!!!」
「……何だ」
「い、いや。余計に以外っていうか」
「まあいい、服を貸しなさい」
「へ?」
「宿の主人から火熨斗を借りてくる」
「ひの??」
「火熨斗だ。服の皺を取るのに使う」
「アイロンじゃないのか。どんなの?」
「気になるならお前もついてくるか?」
「いいのか?」
「私はかまわん。が、見ていてもつまらないと思うぞ」
――数分後。
「え、クラトス。これ」
「火熨斗だ」
「これ、(どうみてもアイロン、だよな)」
「?」
「い、いやなんでもない」
「そうか」
「(クラトスって、やっぱ変なやつだよな)」
「……(シャー、シャー)」
「(なんか、めちゃめちゃ手際いいし)」
*衣紋掛けに続いて、古代人間クラトス。
ちなみに火熨斗は「ひのし」と読みます。
昔のアイロンだそうです。
ユアンは情報としては学習していて「ハンガー」「アイロン」って単語は知ってるのに、実物は知らないといい。
ミトスは自分が使わないものだからって、教えたところで小首を傾げているといい。
クラトスはいろいろなことに興味を失っていたブランクがここにきて出てきて、現場で学習しているといい。
駄目な古代勇者たち。