遺伝子は、そう言ってる
【遺伝子は、そう言っている】
「魔術というのは、つまりだな」
眉間に皺を寄せて説明をする青い髪の青年から、視線を外して。騎士はひっそりと溜め息を吐いた。
夜営場所に選んだ森の外れ。夕飯の片付けは任せて欲しいと、買ってでた姉弟の言葉に甘えて、クラトスはユアンとともに森の奥へと足を踏み入れた。
先日思いがけず手に入れたアイオニトスは、騎士にマナを見る目と、魔術の才を与えた。ただ、魔術を扱うにはそれ相応の技術が伴わなければ意味がない。元よりマナの恩恵を受けているエルフやハーフエルフは、呼吸をするのと同じよう。誰に教えられるでもなく、その術を知るという。
しかし、後天的にその力を手に入れた騎士にとっては違った。
「だいたいのイメージとして──」
手に入れたはいいが持て余し気味の魔術の才は、見事に騎士を混乱せしめた。
そこで行われることとなったのが、ユアンによる魔術講座であったのだが。
「こう、そのなんだ。つまりは──」
いまいち要領を得ない説明を聞き流しつつ。先天的に魔術のセンスがある、ということはつまりこういうことなのかも知れない。と一人納得し。
感覚的な説明を続ける青年に見咎められないよう、騎士はこっそりと食後の眠気を噛み殺した。
[終]
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アトガキ
書きかけのまま放置されていた文章のボツパターン。
結局、ちゃんとユアンが教えてる話にしようと考えつつ。放置されてます、はい。
そして、この父さん、父さんにあるまじき不真面目だなあ。