TOS-SS集 | ナノ
その名前に可能性を


【その名前に可能性を】


「あたしは、前に一度失敗してるのさ」
 顔は伏せられ、地面へと逃がされた視線は所在なげにさ迷っていた。
 ミズホの隠れ里はガオラキアの森を南東に抜けた先へあった。さらわれたシルヴァラントの神子を追うため、手立てとして上げられた一つの可能性は、精霊とレアバードだった。
 うろうろと落ち着きのない視線に、少年は縁側に座ったままのミズホの娘の隣へと、腰を降ろした。
「字の意味のまんまってことさ」
 しいな、芽の出ない種子。未熟種ってね。
 精霊との契約を控えた緊張からか、震える声音は痛々しく。少年は、チラリとしいなを盗み見ると、視線を庭に戻したまま、でもさ、と口を開いた。
「未熟ってことはさ、まだ成長出来るってことじゃねえかな。成長の余地がまだあるって、さ。そういう風にもとれねえかな」
 な? と、ほんの少し得意になって、しいなを振り返る。当のしいなは、伏せていた顔を上げ、少年の顔を見たままほんの少し呆れたような表情をしていた。
「ど、どしたんだよ」
「あんた、親父さんガーデニングが趣味って言ってなかったっけ?」
「そうだけど」
 それがどうかしたのかよ、と聞き返せば、いいや何でもないよ、と軽く返事が返ってくる。
「何だよ、なあ。しいな?」
「あんたらしい。ロイドらしいって思っただけさ」
 苦笑にも近い、しかし確実に笑みを含んだしいなの表情に、ロイドは首を傾げながらも、
「おう!」
 まあ良いか、と。にっと口の端を上げて、隣に座る娘へと真っ直ぐに笑顔を返したのだった。


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後書き

「しいな:芽の出ない種子、未熟種、実らない種」
これから芽が出るって意味ではないですよ。
ロイクラも好きですが、NLならロイしいも好きです。
ロイコレはどうしてもロイ←コレにしてしまう。だって、OVAでも見ない限りロイドくんには友情とか親愛とかしか感じられないというか。まあ、シンフォニアは好感度システムが有るので、そのせいなのかな。不遇なヒロイン・コレット。
ロイしいも基本ロイ←しいですけどね。
しいな可愛いです。マイソロ3でしいな出ないかなぁ。


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