TOS-SS集 | ナノ
意識するとキリがない。


【意識するとキリがない。】


 くうん、鳴き声にうっすら目を開く。ペろりと薄くて柔らかい、濡れた感触が唇に触れて離れていった。温かい。
「なんだ、ノイシュか」
 自然乾燥でバサバサに痛んだ髪を掻き上げて、ユアンは身を起こした。欠伸を噛み殺し、周囲を見渡す。昨晩は野宿をしており、ユアンは見張り番を任されていた、筈であった。
 寝てしまったのか。失態、などという一言で済まされはしない。仲間の命に関わることであった。幸いにも今回は代わりにノイシュが起きて見張ってくれていたようではあるが、決して有ってはならないことである。
 しかし、ノイシュが起こしにくるというのは珍しい。見張り番だったユアンを一番最初に起こしてくれたというのは彼なりの配慮なのかもしれない。
 今だ寝ている他の仲間──飼い主たる人間の元へ寄っていくノイシュを、起き上がったユアンは、体についた土を払いながら立ち上がり、何とは無しに眺めていた。起こす前の挨拶のつもりなのか、くうん、とノイシュは小さく鳴き、
「──!!」
「……ん」
 ノイシュ? 寝起きの気の入らぬ声を上げて、飼い主が目を覚ます。口を嘗めて起こすノイシュに、くすぐったい、と微かに笑うクラトスを見て、ユアンは思わず赤面していた。



*これ何ていうユアン?


back
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -