薫風に織り混ざりし君の。
【薫風に織り混ざりし君の。】
さよさよと、流れる緑髪を見ていた。
微かに鼻孔を擽る柔らかな花の香り。細い髪質はしかし、しなやかに風に乗って絡まる気配すら感じさせない。風に流されるまま、吹かれる草原のように穏やかにさざめいている。
「どうしたのです、ユアン?」
風と触れ合った瞬間、揺らめくような独特の響きを持つ声に、遠い郷愁が生まれる。遥か昔に失われた筈の彼女の名残。
彼女を一部として生まれた精霊に、彼女との僅かな差異を感じながら、ユアンは静かに首を振った。
※精霊マーテルとユアン。
精霊マーテルとマーテルさんは似てる別人くらいだといい。