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遼惇・CM番外編


遼惇・CM番外編


冬の夜空の下。
鼻の頭を微かに赤くして、寒そうに家路を急ぐ張遼。手には買い物袋を下げている。
家の戸口まで着いて、ふと嬉しそうに息を吐く。
ジャケットのポケットから鍵を出すと、手袋に包まれた指先に焦れったさを感じつつ、戸の錠を開けた。
遮断された冷気に強ばっていた体から力を抜き、手袋を取って玄関脇の靴箱の上に置く。靴を脱いで丁寧に揃えると、奥の部屋から生活音が聞こえて、張遼は顔を綻ばせた。
立ち上がり、服を正すと足早に廊下をゆく。
玄関から真っ直ぐ進んだ突き当たりの部屋のドアを、迷うことなく勢いよく開け放った。


「只今帰参致した」
部屋はダイニングとなっており、テーブルについている男──夏侯惇は、テレビのリモコンを握ったまま首だけを張遼の方へと向けて止まった。
その顔は、吹き飛んだ扉にやや引き攣っている。
「元讓殿。只今帰参致しました」
「またお前か」
繰り返す張遼に、夏侯惇は低く唸るように言葉を吐き捨てた。握っていたリモコンを握り潰さぬ内にテーブルの上に置いて、序でに食器類も遠ざける。
「いい加減にしろよ、張遼」
毎度毎度何かしら壊しやがって。
イライラと相手が発した言葉に、張遼は訝しげに小首を捻った。
「元讓殿。それは違いますぞ」
「ああ?」
いやいや、現に壊してるだろう。
足元見ろよ、足元。
「帰ってきた夫に対しての妻の台詞は古来より決まっております。即ち──」
サッと指を三本立てて、張遼曰わく。
「御風呂にする?御飯にする?そ・れ・と・も?」
ああ、その傾げた首の骨を折ってしまいたい。
きっとこの男。そうしたところで、顔色一つ変えないだろうが。
……だって、張遼だし。
久し振りに残業無しで帰れたにも関わらず邪魔をされた、という苛立ちに。夏侯惇は、孟徳じゃないが頭痛がしそうだ、と。
そう考えながら、張遼の突き出した三本の指を手の甲経由で手首まで折り曲げた。


「で?」
結局、闖入者を追い返すこともせず。
否、追い返したところで玄関なり窓なりから礼儀正しく突撃してくるであろうことは、予想に難くない。
……だって、張遼だし。
よって、「追い返すこともせず」というよりは「追い返すことも出来ず」というのが正しいだろう。
フローリングに張遼を正座させ、夏侯惇は椅子に足を組んで座った。
張遼は膝の上に買い物袋を載せて、真っ直ぐ此方を見上げてきている。
「何をしに来たんだ。お前は」
疲れ果て呆れ声を出す夏侯惇に問われて、張遼はふと視線を巡らせた。
よもや、此処まで来て用事を忘れたなどと言うのではあるまいな。
は、と夏侯惇は溜め息を吐いた。
「ああ!」
「なんだ、思い出したか?」
ポンと手を打った張遼は、そのまま買い物袋に手を掛けた。
そこに答えがあるのか甚だ疑問に思いながらも、夏侯惇は思わず身を乗り出す。
張遼は、口元に微かな笑みを浮かべている。
手が、袋の底を掴んだ。
そのまま、袋の底は持ち上げられて、ぼとぼとと何かが零れ落ちる音がした。
思わず、目を見開く。
同時に、何処からか、暗い、嘲笑を含んだような声がした。




「眼玉です」




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「ぃぎぃやぁぁあああぁあッ!!!?」




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○R○CHI、楽しみですねっ。


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