■tos | ナノ
音のない炎天下


 一瞬世界から音が消えた。
 魔導砲トールハンマー、シルヴァラントが作った魔科学兵器。テセアラの主要都市のいくつかが砲撃を受け、破壊された。そのうちの一つに幼少期に過ごした母の郷里があったことに、クラトスは瞑目した。
 覚悟はしていた。トールハンマーについての情報をミトスから聞いたとき。トールハンマーの発射を──戦争を阻止しなければいつかはこうなってしまうというと、予想はしていた。
「どうした?」
 傍らにいたユアンが、訝しげに声を掛けてきた。
「……いや」
 何でもない。
 呟いて閉じていた目を開く。強い、夏の日差しが目を刺した。


[幕切]


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