音のない炎天下
一瞬世界から音が消えた。
魔導砲トールハンマー、シルヴァラントが作った魔科学兵器。テセアラの主要都市のいくつかが砲撃を受け、破壊された。そのうちの一つに幼少期に過ごした母の郷里があったことに、クラトスは瞑目した。
覚悟はしていた。トールハンマーについての情報をミトスから聞いたとき。トールハンマーの発射を──戦争を阻止しなければいつかはこうなってしまうというと、予想はしていた。
「どうした?」
傍らにいたユアンが、訝しげに声を掛けてきた。
「……いや」
何でもない。
呟いて閉じていた目を開く。強い、夏の日差しが目を刺した。
[幕切]